公募研究
本研究プロジェクトでは、光励起により電子系に多様な量子多体効果を発現させることにより、物質の光励起効果を探求し、その活用の道筋をつけることを目的とした。電子には軌道以外にスピンという内部自由度があり、多体電子系の量子性を支配する。本研究では、励起光の偏光によりこのスピン量子性を自在に制御し、多電子系の動的量子相関を観測する。半導体中の励起子には初期電荷状態に応じて中性励起子と荷電励起子の2種類の素励起状態が存在する。中性励起子では、電子正孔交換相互作用により電子と正孔のスピン状態が強く相関している。しかしながら、横磁場印加時には電子と正孔のスピン状態は互いに異なる時間発展を行い、その差に合わせた時間差パルス励起を行うことによって、そのスピン相関を解くことが可能であることを、タイムビン光子の電子スピンへの状態転写の実験で示した。一方、例えば-1価の荷電励起子(負のトリオン)では2つの電子対が一重項状態を形成するため、基底準位は電子スピンが、励起準位は正孔スピンが単独で振舞い、励起光子がそれらのスピン状態を決める。このようなトリオン系では、横磁場印加によって無磁場では禁制遷移の暗励起子発光が許容となるが、電子と正孔のg因子の差が大きいときにはΛ型の光学遷移が可能となり、光子系のスピンが電子あるいは正孔のスピンとだけ相関するようになる。この原理を応用し、電子スピンの量子状態をトリオンを仮想励起状態として測定するコヒーレントカー効果によるスピン状態トモグラフィ測定手法を独自に開発し、光子から電子スピンへの状態転写と読み出しの過程が量子的であることを明らかにした。本研究では、このような光子、電子、正孔が有するスピン自由度間の動的多体量子相関を、量子井戸および量子ドットなどの半導体ナノ構造を用いて探索した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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