研究領域 | 半導体における動的相関電子系の光科学 |
研究課題/領域番号 |
23104702
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
牧野 哲征 独立行政法人理化学研究所, 強相関界面デバイス研究チーム, 基幹研究所研究員 (70311363)
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キーワード | 励起子 / トライフェーズエピタキシー / バンドエッジ発光 / デラフォサイト型構造 / 透過型電子顕微鏡 |
研究概要 |
デラフォサイト型CuScO_2は半導体層(Cu-O)と絶縁体層(Sc-O)の超格子構造を有している直接遷移型ワイドギャップp型半導体(バンドギャップ4.35eV)であり、励起子(電子-正孔対)の結合エネルギーが大きく、今年度は主として試料の品質の改良に取り組んだ。成長表面で融解したビスマス酸化物融剤を援用するというトライフェーズエピタキシー法という新規試料成膜法を採用し、スピネル型酸化物基板上に銅酸化物(CuScO_2)薄膜を製膜した。以下のような構造物性と光学特性の評価を行った。X線回折カーブの半値全幅は0.005度と非常に狭く、従来法で作製した膜より1桁狭かった。透過型電子顕微鏡観察により新製法による試料においては欠陥構造または析出物が非常に低密度にしか分布ないのに対し、従来法で成長した薄膜においてはそれらが高密度に見られることが分かった。また低温ルミネセンス法測定装置を整備し、空間分解能200ミクロン・測定最低温度10 Kで発光(ルミネッセンス)が測定・取得できるようにした。また、CuScO_2膜における吸収・反射・発光スペクトルも測定した結果、p型の直接型ワイドギャップ半導体では初となるデラフォサイト型CuScO_2銅酸化物における紫外範囲で鋭いバンドエッジ発光の観測に至った。従来法で作製した膜においては同種の信号は得られなかったため、発光特性の製法に対する依存性に関する研究結果をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料の改質に取り組んだ結果、トライフェーズエピタキシー法で作製されたデラフォサイト型銅酸化物CuScO_2におけるp型の直接型ワイドギャップ半導体では初となる紫外バンドエッジ発光の観測に至り、その成果を論文[3, Appl.Phys.Express]に結実させることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
デラフォサイト型銅酸化物CuScO_2はいままで光学的シュタルク効果が研究された他物質よりも励起子効果が強いため、他の光学的非線形性からの寄与の切り分けが容易となり当効果の発現機構の解明に近づくと考える。本研究における今後の方策としては、励起子共鳴励起から少し離調した条件下におけるサブピコ秒ポンプ・プローブ分光測定を行い、CuScO_2における光学的シュタルクシフトならびに吸収飽和度を(1)ポンプ・プローブ偏光の組み合わせ、(2)励起光強度、(3)ポンプ光離調度の関数として求めた上で、(a)励起子位相緩和時間ならびに(b)電気双極子効率を定量する予定である。
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