一次元光子場と量子発光体とが強く結合した「一次元量子光学系」においては,入射光と発光体からの輻射との破壊的干渉のために入射光子が極めて効率よく発光体と相互作用し,自由空間中では不可能な新奇光学現象が可能となる.特に,発光体がΛ型あるいはΔ型の三準位系であり(ⅰ)励起状態からの二つの崩壊レートが等しい(ⅱ)励起状態からの輻射が完全に一次元場に放出される,という条件を満たす場合には,単一光子の入射により決定論的に発光体の量子状態をスイッチすることが可能となり,量子メモリや光子検出器への応用が期待される.本研究では,上述の二条件を満足する一次元量子光学系を実装する方法を理論提案し,実験グループとの共同研究によりその光学応答を解析した.超伝導磁束量子ビットと伝送線共振器とが分散領域で強く結合した系において,超伝導ビットを外部マイクロ波でドライブすると,適当なドライブ周波数においてこの結合系が輻射崩壊レートを自在に制御可能な単一量子発光体として動作し,条件(ⅰ)を満足しうることを理論的に明らかにした.またこの系の微弱マイクロ波に対する線形応答を解析し,反射波のコヒーレント振幅が完全に消滅すること,入射波がほぼ完全に下方変換されることなどを理論的に示し,実験でも確認することができた.
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