公募研究
本研究では、高強度テラヘルツ波を用いて、光励起状態の制御を行い、それによる変化をシングルショットで検出することを目的としている。そのために、平成23年度は、新しい高強度テラヘルツ波発生方法の確立と、シングルショットの分光測定技術の確立を目指した研究を行った。その結果、回折格子を結合させたLiNbO3単結晶基板を用いて、高強度のテラヘルツ波を発生することができることを明らかにした。また、ここで回折格子の間隔を10%ほど変化させてもその発生強度はほとんど変化しないことが分かった。このことは、今回の方法が作成・調整の簡便な新しいテラヘルツ光源として期待できることを示している。また、シングルショットの分光測定技術開発では、反射型の階段状ミラーであるエシェロンミラーを用いてプローブ光に空間的に時間差を付与することで、光カー回転の測定が可能であることを明らかにした。本成果は、カー媒質を強誘電体に変更することで、簡便にフォノンポラリトンのイメージング分光ができることを示した重要な成果である。実際に観測されたフォノンポラリトンの振動は検出波長によって異なる周波数を示しており、時間・周波数の二次元分光法が可能となるこの手法が非常に有効であることを示している。また、カー回転の測定からは、超短パルスレーザーのパルス幅やチャープなどの測定が可能となることがわかった。また、高強度のテラヘルツ光源として、放射光から出力されるテラヘルツ波の電場信号を検出することに成功した。今後はこれらの開発した手法を用いて、光励起状態を制御する研究を行っていきたい。
3: やや遅れている
本来の研究では、高強度テラヘルツ波の発生手法が思うほど効率が良くなく、それを用いた制御実験まではいかなかったため。シングルショット系の開発は順調に進んでおりその面では今後の発展が期待できる。
高強度テラヘルツ波発生手法に関しては、新規手法ではなくより高い電場強度が報告されている手法に変更し、それによって光励起状態の制御を試みる。これは新規開発した方法があまり高い電場強度を観測できなかったためである。しかし、検出系はほぼ完成しているので、今後はこれを発生方法をより強度の大きなものとし、分光測定につなげていくつもりである。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件)
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