研究領域 | 半導体における動的相関電子系の光科学 |
研究課題/領域番号 |
23104715
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
石川 陽 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助教 (10508807)
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キーワード | 半導体光物性 / 高密度励起 / 近接場光学 / 相分離 |
研究概要 |
本研究の目的は、半導体電子正孔系での相分離過程を解析するための非平衡時空間ダイナミクス理論を構築し、相分離による電子状態の時空間変化に対する時空間分解光学応答理論を確立することである。平成23年度の研究計画では基礎理論の構築と数値計算手法の開発を予定していた。 研究成果として、まず半導体電子正孔系の時空間キャリアダイナミクスと時空間分解光学応答の全量子論的な基礎方程式を導出することができた。その全量子論的方程式を用いて、キャリアのエネルギー緩和過程に対する空間伝搬と発光・吸収スペクトルの時空間変化の関連性を解明し、学術論文を投稿準備中である。さらに、相分離ダイナミクスの現象論的を組み合わせることで、半導体電子正孔系での相分離ダイナミクスとそれに対する時空間分解光学応答の全量子論へと拡張することに成功し、数値計算手法を用いながら研究を進めている。それらの研究成果は平成24年度に開催される国際会議にて発表予定である。 また、当初の研究計画にもあった通り、他機関の研究グループとの共同研究も進めてきた。特に、半導体電子正孔系における非平衡光学応答に対する基本概念を、全量子論的手法を基に再構築する試みを進めており、その成果を当科研費プロジェクトの国際ワークショップで発表予定であるとともに、学術論文として投稿準備中である。 従来の光物性ではエネルギーと時間に関する情報を抽出し制御してきたが、加えて電子状態の実空間情報を制御することができれば、新しい光科学技術の発展へと繋がることが期待される。平成23年度に実施した研究の成果は基礎理論の一部となるものであり、光科学技術の新分野開拓に対して重要な意味を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度終了時における研究目的の達成度を深めるために当初計画していた理論手法を変更したこと、研究遂行上で派生的に得られた基礎的な課題へ取り組む必要があったことなどから、交付申請書に記載した研究計画を軌道修正したからである。しかし、むしろ幅広い分野における成果へと繋がり、最終的な研究目的にも変更は無い。
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今後の研究の推進方策 |
当初は微視的理論手法を全面的に用いる計画であったが、最終的な研究目的の達成度と現象に対する理解度をより深めるために、現象論を積極的に併用する理論手法へ研究計画を微修正する。他機関の研究グループとの共同研究とともに、研究代表者所属機関の近接場光学に関する実験グループとの共同研究も進めることで研究の推進を図る。 平成23年度は基本概念や基礎理論手法の構築を重点的に行なったため、成果の公表に関しては不十分であったが、平成24年度は、具体的な研究成果を国内外の学会で発表し他研究者との研究討論を通して、より研究の深度を深めるよう努力する。また、研究成果を纏め上げ学術論文として公表することを意識する。
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