研究概要 |
本研究は、電子スピン共鳴装置を用いた時間分解サイクロトロン共鳴(Cyclotron Resonance,CR)法により、光キャリアの有効質量決定とキャリアダイナミクスの観測を行い、半導体材料において光キャリアが関連する光物性を明らかにすることを目的としている。 H23年度は、まず、ナノ秒パルス光励起下での時間分解CR法をCu_2O結晶に適用し、CR信号の励起波長依存性、励起強度依存性、温度依存性を丹念に調べた。その結果、Cu_2O結晶での光キャリアは励起子のAuger解離過程で生成すること、光キャリア密度が高いとプラズマ遮蔽によりCR共鳴が低磁場シフトすること、さらに、高密度ではマグネトプラズマ共鳴することを見出した。共振器内での任意の方向に面した試料位置での光強度を実測することで、試料表面での励起強度を見積もり、試料正面(側面)での励起密度19(4.7)x10^<16>cm^<-3>に対し、80ns後の励起子密度は3.9x10^<15>cm^<-3>と見積もられ、Auger定数が4(1)x10^<-17>cm^3/nsと見積もられた。また、CR共鳴の磁場に対する結晶試料方位依存性からバンド質量の僅かな異方性を捕らえようとしたが、実験精度内では有意な差異は見出されなかった。 一方、酸化物SrTiO_3結晶・TiO_2結晶で、強励起下で発生する青色発光に関与する光キャリアの時間分解CR測定を試みたが、励起紫外パルス光の強度が閾値に足らず、CR信号の取得には至らなかった。さらに、正孔移動度が高いことで知られるルブレン分子生結晶でのバンド伝導を捕らえられるかについても、ルブレン単結晶を作製して、本CR法で確かめたが、有意な信号はまだ得られていない。
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