研究概要 |
平成23年度は,光カーゲート分光法を構築すると共に,CdTe/CdSコアシェル型QDsおよび励起子発光が強く観測されるCdS QDsを合成してそれらのオージェ再結合ダイナミクスを解析した。また,BiexcitonやTriexciton発光およびそれらの安定化エネルギーの粒径依存性の解析を試みた。 光カーゲート発光分光法によるマルチエキシトン分光ストリークカメラの時間分解能より早い時間領域における励起子の振る舞いや時間分解発光スペクトルを観測するために,フェムト秒光カーゲート発光分光法を構築した。光カー媒質には三次の非線形感受率x^<(3)>の大きな特殊ガラスを用いた。光検出器としてインテンシファイヤー付きCCDを用い,プログラム作成等を行った。 CdS QDsのフェムト秒過渡吸収分光によるオージェ再結合ダイナミクスマルチエキシトン分光の際に観測されるオージェ再結合が,表面欠陥等にどの様な影響を受けるか,フェムト秒過渡吸収分光法により解明した。励起子吸収帯が400nmより短波長にあるものは第3高調波で励起し,白色光は第2高調波をD_20等に集光して得た。試料には欠陥発光や励起子発光のみを示すCdS QDsを用い,1S吸収ダイナミクスの励起光強度依存性を詳細に解析した。その結果,オージェ再結合は,表面一層程度の表面保護剤や表面欠陥には依存しないことが明らかになった。マルチエキシトン分光では,粒径の小さなCdSは発光が短波長にあり僅かなエネルギー差を検出するのが難しく,粒径の大きなCdSでのみバイエキシトン発光の観測が可能であった。 CdTe/CdSコアシェルQDsのオージェ再結合ダイナミクス水熱合成法を用いてCdTe/CdSコアシェルQDsを合成し,その発光特性やオージェ再結合ダイナミクスを解析した。その結果,シェル厚によってオージェ再結合の寿命が大幅に遅くなる事が分かった。
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今後の研究の推進方策 |
コアシェル型量子ドットだけでなく,ナノロッドも合成してレーザー分光実験を行い,オージェ再結合が形やサイズにどの様に依存するのか明らかにする。また,クライオスタットを用いた低温での測定を行い,温度依存性も含めてオージェ再結合の詳細なメカニズム解明を行う。
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