本研究課題では、触媒調製の新しいアプローチとして、構造が規整された表面上に分子レベルで精密に金属錯体を集積することによって特異かつ有用な触媒反応場を構築する手法の開発を試みている。今年度は、金表面上における種々の高密度なジイソシアニド金属錯体単分子層の形成とその触媒機能、および、規則性メソポーラス有機シリカ表面上における金属錯体高密度固定化について検討を行った。 有機化合物が表面上で高密度な自己組織化単分子層を形成する現象は種々の機能性材料の調製手法となる。この現象を触媒調製に利用した例は少ないが、特異的な触媒反応場の構築手法として展開できる可能性を秘めている。最も利用されている自己組織化単分子層は金表面上のチオール分子の系であるが、我々は新展開を図るべく、研究例の非常に限られたイソシアニド単分子層を触媒反応場の構築に利用することに着手した。今年度は、金表面上に新たに高密度なニッケルおよび鉄―ジイソシアニド単分子層の形成を行い、その触媒機能を精査した。 メソポーラスシリカは担持金属触媒の担体として広く用いられている。規則的なメソ細孔空間内に活性金属種を導入して特殊な触媒反応場として利用する試みが報告されているが、配位子分子を導入するために元来のメソ細孔の規則性が失われることが多い。そこで今年度の研究では、配位子分子が骨格内に組み込まれた規則性メソポーラス有機シリカを活用することとした。特に、特異な触媒機能の発現が期待される複核錯体構造としての高密度固定化を可能にする手法の確立を目指した。また、今年度の検討では、メソポーラスシリカおよびゼオライト鋳型炭素に担持した白金ナノ粒子がそれぞれ微量エチレンの低温酸化およびフェニルアセチレンの部分水素化において優れた触媒機能を有することを見出した。
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