研究概要 |
骨格転位は置換基効果により反応経路が著しく変化する。多様性をもたらす官能基として、酸性プロトン、分子内炭素-炭素多重結合、オキシラン環、連結炭素鎖の伸長などが予想される。本年はPropargyl oximeの反応系において置換基効果による反応経路の探索を行った。芳香族アルデヒド由来のO-プロパルギルオキシムの骨格転位反応により炭素-酸素結合の切断を経て4員環ニトロンが効率的かつ位置選択的に合成できることを見出した(Org.Lett,2011,13,3616に報告)。特に触媒条件の再検討により、ジエン配位子CODを用いることにより反応は円滑に進行することを見出した。生成物の異性化実験により、位置選択性の発現機構を解明した。また、α、β不飽和アルデヒド由来のZオキシムの反応は180℃の加熱条件では銅触媒なしで反応が進行し、2,3,6-3置換ピリジンオキシドが生成することを見出した(Tetrahedron Lett.2011,50,6470に報告)。鍵素過程であるO-プロパルギルオキシムとN-アレニルニトロン間の[2,3]-転位は環状遷移状態での立体反発が小さい場合、協奏的に進行することを明らかにした。また、α、β不飽和アルデヒド由来のEオキシムの銅触媒反応とは異なる置換パターンのピリジン誘導体を合成することが可能である。オキシムα位に水素を有する基質の反応がN-0結合の切断を経て、オキシラン環・エナミン・イミン部位を持つ化合物が生成するとことを見出した。特に嵩高いアミンを添加することにより効率的に反応が進行することを明らかにした。アルキニルオキシム系において骨格転位の多様性が潜在していることを示唆している。
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