研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105506
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大井 秀一 東北大学, 環境保全センター, 教授 (00241547)
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キーワード | C-H結合活性化 / パラジウム触媒 / 塩化銅 / アリール化反応 / アリールトリメチルシラン / 電子豊富芳香族化合物 / ビアリール化合物 |
研究概要 |
遷移金属触媒による直接的C-H結合アリール化反応は効率的なビアリール合成を行う上で、非常に有用な反応として注目されている。本研究課題では、塩化パラジウム/塩化銅触媒系を用いて、安定でこれまで反応に利用されることが稀であったアリールトリメチルシランをアリール化試薬とする芳香族化合物の直接的C-H結合アリール化反応について検討した。 触媒にPdCl2(MeCN)2、酸化剤にCuCl2、アリールトリメチルシランをアリール化試薬として用いて、1,2-ジクロロエタン中80℃、16 時間反応させたところ、種々チオフェン類のβ-位で優先的に直接的C-H結合アリール化反応が効率的に進行した。 最適条件下、ベンゾチオフェンを基質としてアリールトリメチルシランを検討したところ、トリメチルフェニルシランでは収率87%で3-フェニルベンゾチオフェンが得られた。さらに電子豊富、電子不足な種々アリールトリメチルシランでも良い収率で対応する3-アリールベンゾチオフェンを得ることが出来、β-Ar/α-Arの位置選択性は約9:1であった。ただし、強い電子供与性基OMe、電子吸引性基CF3を持つような場合には収率の低下が見られた。また、種々置換基を持つチオフェンとの反応においてもβ-位選択的にアリール化反応が進行した。チオフェンとの反応では3-フェニルチオフェンだけでなくジアリール化体である3,4-ジフェニルチオフェンも得られた。2-位または3-位にMeやPhといった電子供与性基を有する場合には比較的高い収率で対応する生成物が得られた。しかし、Cl、Brといったハロゲンを持つチオフェンではハロゲン部分の還元が進行してしまい、中程度の収率に留まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の一つである異種金属間の相互作用による高反応性有機遷移金属活性種の創製については、反応条件の最適化や反応に用いる基質の適用範囲の検討を順調に実施し、当初の計画通り研究課題を推進することができた。 しかし、もう一つの目的である新しいメタラサイクル型有機遷移金属活性種の創製に関して、平成23年10月時点で同研究分野の他研究グループによって発表された知見に対して、本研究課題との比較検討する追加実験の必要が生じたために6ヶ月間の遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度中に達成予定であったメタラサイクル型有機遷移金属活性種の創製に関するC,N-アリールメタラサイクル中間体の機能開発と直接クロスカップリングの開発について引き続き検討を進めるとともに、平成24年度はカルベン型アリールメタラサイクル活性種の創成と不活性結合の活性化の検討を進め、また、異種金属間相互作用を利用する求電子的アリール遷移金属活性種の創成について引き続き検討を行う。 平成23年度における進展状況の遅延を解消するため、研究協力者を増強し期間内の研究目的の達成を図る。
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