研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105510
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山下 誠 中央大学, 理工学部, 准教授 (10376486)
|
キーワード | ホウ素 / 多座配位子 / 低配位錯体 / 触媒 |
研究概要 |
平成23年度は以下の二種類の成果が得られた。 1.シクロペンタジエノンを有するRu錯体を用いた直鎖選択的ヒドロホルミル化反応の開発 独自に合成したシクロペンタジエノンRu錯体に対して、ビスホスフィンおよびビスホスファイトを配位子として添加し、プロペンおよび1-deceneの触媒的ヒドロホルミル化反応を行ったところ、一炭素増炭した直鎖アルデヒドが選択的に得られた。その活性および直鎖選択性はRuを用いた触媒として最高の水準であった。また、単離したCp^*Ruビスホスフィンヒドリド錯体と重水素ラベルした1-deceneの当量反応を行い、反応機構に関する知見を得た。 2.PBPピンサー配位子を有する高反応性Rh錯体の単離とOH結合活性化反応およびPt錯体の合成 3配位PBP-Rh錯体とフェノールや1級アルコールのOH結合が瞬時に反応し、PBPRhヒドリドフェノキシド錯体の生成・PBPRhカルボニル錯体の生成を観測した。種々の反応機構解析実験によって、これらの反応はOH結合の酸化的付加反応により開始され、フェノールの場合はここで反応が止まるのに対し、1級アルコールでは酸化的付加後にβ-水素脱離が進行してアルデヒドを遊離、続いてアルデヒドのCH結合が酸化的付加、さらにアルキル基の移動を経由後にアルカンが脱離してカルボニル錯体を与える反応が進行したことを明らかにした。一方、領域内共同研究として京都大学の村上らと共に、3配位PBP-Rh錯体と2級および3級アルコールを反応させた。2級アルコールを用いたときは1級アルコールと同様にカルボニル錯体を与えたが、3級アルコールを基質として3配位PBPRh錯体と反応させたところ、反応は触媒的に進行し、骨格転位を経由した生成物を与えることが明らかとなり、これはPBP金属錯体を用いた初めての触媒反応の例となった。また、新しくPBP配位子を有するPt錯体の単離も行い、アルコールや水との反応を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規Ru錯体の単離のみならず、安価なRu錯体を用いた直鎖選択的ヒドロホルミル化反応を達成できたこと、PBP配位子を有するRh錯体の反応性を予想以上の正確さで明らかにできたこと、これまでに合成例のないPBP-Pt錯体を合成できたことにより、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は本学術領域内での共同研究を継続し、京都大学村上らと共にPBP-Rh錯体を用いたC-C結合切断反応に着手する。また、既に合成していたPBP-Rh錯体および新たに合成したPBP-Pt錯体の各種素反応を精査すると共に、これらを用いた触媒反応の開発へと展開する。PBP-Pt錯体は水と加熱した際に含有するホウ素原子を失うことがわかっているので、ホウ素原子が脱離しない条件を探ると共に、この脱離を抑えるための配位子デザインも新しく行うことで、新規な触媒反応への足がかりをつかむ。
|