平成24年度は以下の2種類の結果が得られた。 1.PBPピンサー配位子を有するPt錯体を用いたアルケンのヒドロシリル化反応の開発および新規配位子前駆体としてのジヒドロボラートの合成 昨年度の成果として得られたPBP-PtCl錯体をHSiEt_3および1-deceneと加熱することにより、ヒドロシリル化反応が進行して、トリメチルシリルデカンが得られることを発見した。反応機構を解析するため、ヒドリド錯体PBP-PtHを合成、単離して触媒反応に用いたところ、これを経由していないことがわかったため、典型的なChalk-Harrod型の機構で進行していることが明らかになった。一方で、このヒドリド錯体を二酸化炭素と反応させると、瞬時に反応して対応するPBP-Ptホルマト錯体に変換されることを見いだした。 また、PBP配位子前駆体として用いているヒドロボランに対してTHF中で水素化カリウムを作用させることで、ホウ素上に水素が2つ結合したジヒドロボラート型の化合物を合成、単離することに成功した。この化合物は結晶中でカリウム原子がジヒドロボラート部位とベンゾ縮環部位を架橋して、無限構造をとっていることが明らかになった。 2.Ru錯体触媒のみを用いたアルケンの直鎖選択的ヒドロホルミル化-水素化反応の開発 独自に合成したシクロペンタジエノンRu錯体に対してXantphos配位子を加えて、プロペンまたは1-デセンを合成ガスと反応させたところ、直鎖選択的ヒドロホルミル化反応が進行して直鎖アルデヒドが生成すると共に、このアルデヒドが水素化された直鎖アルコールが最高73%の収率で得られた。また、昨年度の成果として既報のRh-Xantphos/二核Ruの二元系触媒を用いたアルケンの直鎖選択的ヒドロホルミル化-水素化反応における反応速度論解析を行い、ヒドロホルミル化段階の反応速度はアルケン濃度に対して一次、水素化段階の反応速度はアルデヒド濃度に対して0次であることを明らかにした。
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