研究概要 |
クラスター骨格の柔軟性を活かした新しい分子変換反応の開発を目指し,本申請研究では炭化水素配位子とヘテロ原子との結合形成に注目して研究を遂行し,本年度は三核平面の片側を三重架橋ボリレン配位子が占めるヒドリドクラスターを用いてクラスター上でのB-C結合形成反応について検討した.三重架橋ボリレン錯体1とアセチレンとの反応では二分子のアセチレンが三核反応場に取り込まれたエチン-エチリデン錯体2が得られた,この錯体を180℃に加熱することで,一つのRu-Ru結合の開裂とともに,三核平面の上下に位置した配位子間でのカップリング反応が進行し,closo型のボラルテナシクロペンテニル錯体3が得られた,錯体3の構造はX線構造解析によって明らかにし,メタラサイクル部分の2位にホウ素が,4位にメチル基が存在する構造であることを確認した.ホウ素上の置換基を水素からメトキシ基に置換したボリレン錯体とアセチレンとの反応からも同様なcloso型ボラルテナシクロペンテニル錯体4が得られたが,この場合にはメチル基は5位に位置することが明らかとなり,ボリレン配位子のルイス酸性の低下によって炭化水素配位子の骨格変換反応のメカニズムが変化したことが示唆された.2分子のアセチレンと同じ炭素数を持つブタジエンとの反応でも同様なボラルテナシクロペンテニル錯体の生成が期待されたが,この場合には3あるいは4は全く生成せず,代わりにホウ素と2つの炭素との間で3員環を形成した新規錯体5が得られた.X線構造解析およびNMRの結果から5の3員環はトリス-μ-カルベン錯体のC_3環と同様に主にp軌道によって構成されていることが示唆された.
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