研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105515
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
向 智里 金沢大学, 薬学系, 教授 (70143914)
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キーワード | 合成化学 / アレン / 環化付加反応 / シクロブタン / ニトリル |
研究概要 |
我々はこれまでに、アレンと多重結合(アルキン、アルケン、アレン)を反応成分とする各種分子内環化付加及び環化異性化反応を開発している。最近、本研究の一環として、アレン末端にシクロプロパンを直結させ、3原子から成るアルキル直鎖でアルキン部と連結させたアルキン-アレニルシクロプロパンを基質とする[5+2]型環化付加反応を検討した結果、ジクロロエタン中10mol%の[RhCl(CO)_2]_2又はトルエン中[RhCl(CO)dppp]_2存在下で効率良く進行し、ビシクロ[5.4.0]骨格が収率良く得られることを見出した。今回、本反応の適用範囲をアルキン-アレニルシクロブタンに拡張することを目的として研究を行った。 各種ロジウム(I)錯体を用いて反応条件を検討した結果、ジオキサン中5mol%のRhCl(dppp)_2存在下で所望の[6+2]型環化付加反応が進行し、ビシクロ[6.4.0]骨格を収率良く与えることが判明した。本反応は、シクロブタンが結合した側のアレンの二重結合とアルキンがロジウム錯体とメタラシクロペンテン中間体を形成し、シクロブタンの開裂に伴うメタラシクロノナジエンの生成と続くロジウムの還元的脱離を経て進行すると考えている。本反応で特筆すべき点は、シクロブタン上に官能基を持たない基質で反応を行っていることである。遷移金属によるシクロブタンの開裂では、一般に環上の官能基の存在が不可欠である。例えば類似の反応として、アルケン-ビニルシクロブタノンの[6+2]型環化付加反応がWenderらにより報告されているが、この場合は、単なるシクロブタンでは全く八員環生成物が得られない。従って、本反応は単純なシクロブタンの不活性炭素-炭素結合を開裂させる稀な例であり、ビシクロ[6.4.0]骨格を有する化合物の簡便合成法としてのみならず、反応機構の面からも興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルキン-アレニルシクロブタンの分子内[6+2]型環化付加反応が首尾よく進行する条件を比較的早期に見出すことができたため。既に、研究成果を論文等で公表している。また、アレン-ニトリルの分子内[2+2+1]型環化付加反応においても、ベンゼン環で両官能基を連結した単純な基質において良好な収率で目的物が得られており、現在基質一般性を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)アルキン-アレニルシクロブタンの分子内[6+2]型環化付加反応で得られた知見に基づき、シクロブタン部位をより歪みの小さなシクロペンタンに環拡大した基質を用いて、分子内[7+2]型環化付加反応の検討を行う。 2)アレン-ニトリルの分子内[2+2+1]型環化付加反応の基質一般性を調査する。 また1)、2)のいずれにおいても、反応機構を解明すべく反応系を設計し、結果の解析を行う。
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