研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105520
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大村 智通 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00378803)
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キーワード | 合成化学 / 遷移金属触媒 / 結合活性化 / 結合形成 / 脱水素化 / C-H官能基化 / 炭素-水素結合 |
研究概要 |
炭素-水素結合の触媒的活性化に基づいた芳香族炭化水素の特徴ある変換手法創出を目的として、ベンゼノイド構造からキノイド構造を構築する効率的変換反応の開発に取り組んでいる。平成23年度の研究においては、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目1.ヘテロ5員環と縮環したベンゼンの触媒的脱水素化/C-H官能基化」について検討を行った。まず、1-臭化-1-アルキンをアルキニル化剤として用いるイソインドリンの触媒的脱水素化/C-Hアルキニル化の開発に取り組んだ。(臭化エチニル)トリイソプロピルシランを用いて検討を行ったところ、酢酸パラジウムを触媒に用い、脱水素化とC-Hアルキニル化を段階的にワンポットで行うことによって目的の変換反応が効率よく達成され、1,3-ジアルキニルイソインドールが良好な収率で生成することを見出した。C-Hアルキニル化について詳細な検討を行った結果、イソインドールの5員環ジエン部位と臭化アルキンとの[4+2]環化付加を経由する、イソインドールに特徴的な無触媒反応であることが明らかとなった。次に、アシル化剤としてアルデヒドを用い触媒的脱水素化/C-Hアシル化を検討した。その結果、二座リン配位子を有するイリジウム触媒がイソインドリンの脱水素化に有効であることが明らかとなった。この反応溶液にワンポットでアルデヒドを添加したところ、目的のアシル化は進行しないものの、イソインドールの含窒素5員環部において4員環への環縮小炉進行し、o-キシリレン等価体であるベンゾシクロブテンが生成する、という新しい様式の反応を見出した。さらに、イソインドリン以外の基質について触媒的脱水素化を検討した結果、これまでに確立した触媒系は含窒素5員環構造を有するN-アルキルイソインドリンにのみ有効であることが明らかとなった。これらの知見は、C-H連続変換に基づくキノイド構造構築の新概念創出に資すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族性が低下する一見不利な変換反応を、効率的に進行させる新たな触媒系を見出すことができ、キノイド構造形成の新概念を創出するための有用な基盤的知見が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した触媒系は、含窒素5員環構造を有するN-アルキルイソインドリンにのみ有効であることが明らかとなったことから、より効率的に変換反応を推進する強力な触媒系の探索、ならびに生成系が有利となるようなC-H官能基化の開発が重要であると認識された。また、基質に配向基を導入するなど、反応を促進・制御するための基質構造に注目した検討が必要であると考えられる。これらを踏まえ今後の検討を行うとともに、これまでに得られた研究成果について論文執筆を進め学術雑誌での発表を行う。
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