C-H官能基化は通常不活性なC-H結合を活性化して新たに炭素-炭素結合形成や官能基化する手法であり、直截的な合成を可能とするため近年注目を集めている。特にC(sp3)-H活性化は、新規な合成戦略を提供する反応として期待されている。本年度は以下の点について研究を展開した。 1.平成23年度に見いだしたパラジウム触媒によるベンジル位のC(sp3)-Hの活性化について引き続いて検討した。3置換炭素、4置換炭素の構築に応用可能であるか種々基質について検討し、シクロプロピル基メチン部位のC-H活性化を経由して四級炭素の構築が可能であることを見いだした。リガンドや添加物などについて種々検討し、最適条件を明らかにした。 2. ベンジル位メチル基のC-H活性化をイソシアニド挿入と組み合わせてインドール合成法を開発した。パラジウム触媒のヨウ化アリールへの酸化的付加とイソシアニド挿入により生じた中間体からC(sp3)-H活性化によりパラダサイクルとし、続く還元的脱離により2-アリールインドールを合成した。本反応ではオルト二置換のイソシアニドを用いる必要があったが、官能基許容性が高く様々な2-アリールインドールを合成可能であった。さらに、アルキンの挿入と組み合わせることで四環性カルバゾール骨格の構築にも成功した。 3.コンプラナジン類はC2-C3'のビピリジル結合部位で非対称となっている二量体型アルカロイドである。我々はCbz-リコジンよりピリジンN-オキシドとブロモピリジンを合成し、パラジウム触媒を用いた直接的アリール化によりコンプラナジン類の非対称構造を構築することに成功した。コンプラナジンAとBの全合成を行いピリジンN-オキシドのC-H官能基化が複雑な基質にも適用できることが示し、さらに、ピリジンN-オキシドがコンプラナジン類の生合成中間体であることを提唱した。
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