研究実績の概要 |
我々は,触媒中心から比較的離れた周辺部を修飾することにより触媒機能の向上をはかる研究を進めている.周辺部に導入する官能基や構造体の性質が触媒反応においてどのような影響を与えるかを調べ,これらを高活性触媒の開発に繋げることが本研究の狙いである.ここで我々は,周辺部に柔軟な構造を導入したルテニウム-メタセシス触媒を設計・合成し,剛直ならびに柔軟な構造がメタセシスにおいてどのような影響を及ぼすかに焦点を当てた研究を進めることとした.柔軟な構造体として,ポリベンジルエーテル型デンドリマーを導入することにした.合成した柔軟なデンドリマーを有するルテニウム錯体の構造はX線結晶構造解析ならびにONIOM法により最適化した. 4,4-ジエトキシカルボニル-1,7-オクタジエンを基質とした閉環メタセシスをモデル反応として触媒の性能を評価した.トルエン溶媒中,室温での反応において第0世代触媒は高い活性を示した.世代を拡張した第1,第2世代触媒もほぼ同様の触媒活性を示すことが分かった.このことは,周辺部に導入したデンドリマー部位は第2世代触媒においても反応を阻害しないことを示している.一方,反応温度を-30度に低下させると,デンドリマーの世代が増加するにつれ反応性が低下する結果となった.デンドリマー部位は,室温では比較的自由に動き反応を阻害することは無かったが,低温ではその動きが遅くなることで基質の接近を阻害したのではないかと考えられる.
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