研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105524
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40273586)
|
キーワード | カルボン酸 / ロジウム触媒 / パラジウム触媒 / ルテニウム触媒 / 炭素―水素結合切断 / 酸化的カップリング / アリール化 |
研究概要 |
本研究の初年度にあたる平成23年度は、炭素-水素結合の直截変換を行いうる錯体触媒のスクリーニングを行う中で、ロジウム、ルテニウム、およびパラジウム触媒を用いるいくつかの新規反応を見出した。まず、比較的配位能の低いとされるアルコール性水酸基を有する基質でも、カチオン性III価ロジウム錯体を触媒として用いることで、近傍の炭素-水素結合がスムーズに切断され、アルキンとの直截カップリングが効率よく行えることがわかった。この触媒系を用いると、芳香環上だけでなく、ビニル炭素-水素結合切断を伴うカップリングも可能であり、α,α-ジメチルアリルアルコールから対応する2H-ピラン誘導体が合成できることが明らかになった。また、配向基を利用した位置選択的炭素-水素結合切断/不飽和化合物との酸化的カップリングを行いうる触媒として、パラジウム、ロジウムに続いてルテニウムが最近注目されている。我々は、II価ルテニウム錯体に銀塩を添加して生じるカチオン性ルテニウム触媒が、ベンズアミド類とアルケンとの酸化的カップリングにおいて、高い活性を示すことを見出した。興味深いことに、この反応は銀塩を添加しない条件では、全く進行しない。一方我々はこれまでに、パラジウム触媒を用いるヘテロアレーンカルボン酸類の直接アリール化について検討を行い、カルボキシル基の近傍およびイプソ位で複数のアリール基が導入された生成物が得られることを報告している。このようなマルチプルアリール化とは対照的に、ヘテロアレーン酢酸の反応では、近傍でのモノアリール化のみが起こることを、今回明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルボキシル基を配向基とする炭素-水素結合の直截アリール化、アルケニル化あるいは環化反応に対し、高い反応性を示すロジウム、ルテニウム、およびパラジウム触媒を順調に開発できている。今後、これらを用いて、より幅広いカルボン酸類の誘導体法の開発を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
このまま、炭素-水素結合の直截誘導体化に対し、高い活性を示す遷移金属触媒の開発、およびそれを用いたカルボン酸類の直截変換法の開発を平行して進めて行く予定である。特に、ルテニウム触媒が、そのようなカルボキシル基を配向基とする直截誘導体化に有効であることは、最近示されたばかりであるので、その触媒作用について重点的に調べる予定である。
|