研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105529
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
森本 積 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (10324972)
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キーワード | 結合活性化 / ホルムアルデヒド / 触媒反応 / カルボニル化 / 有機合成 |
研究概要 |
本研究では、ホルムアルデヒド、ギ酸、単糖類など入手容易な炭素資源が共通して有するホルミル炭素-水素結合に着目し、その結合の遷移金属錯体による新規活性化法の創出、および、それを基軸とした新しい分子変換反応の開発を目的とした。 1.3-置換イソインドリノン類の簡便合成法を開発した。この手法において、イソインドリノン骨格の核となるカルボニル部を、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドから引き抜き導入することに成功した。3位の置換基導入の立体化学を、エナンチオマー過剰率95%以上で制御できた。 2.ホルムアルデヒドのホルミル結合の活性を基軸としたビニルアレーン類の不斉ヒドロホルミル化反応を開発した。代表的なビニルアレーンであるスチレンを、不斉ロジウム触媒存在下でホルマリンと反応させることにより、高位置選択的(分岐アルデヒド選択性90%以上)、および、高立体選択的(エナンチオマー過剰率90%以上)に3-フェニルプロピオンアルデヒドを合成できた。ホルムアルデヒドが、触媒的活性化により、一酸化炭素・水素の1対1混合ガスと化学的に等価に働くことが明らかとなった。 3.自然界から持続的に入手できる糖アルコール、マンニトールやグリセロールを、炭素-炭素三重結合と二重結合を併せ持つエンイン類と反応させると、双環状ケトン誘導体が得られることを見い出した。遷移金属触媒の作用により、これら糖アルコールがあたかも一酸化炭素であるかのようにカルボニル源として働くことを明らかにした。 以上の成果は、入手容易なホルミル化合物の合成化学的な新規利用法を提供するとともに、従来毒性の高い一酸化炭素の利用に依存してきたカルボニル化法を操作上安全かつ簡便に実施できる実用的合成法を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である、ホルムアルデヒドや糖アルコール誘導体のホルミル炭素-水素結合の遷移金属触媒による活性化、および、その活性化プロセスを活用した新規合成反応を見い出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究で開発した触媒的活性化プロセスを活用することにより、持続的により入手の可能な多糖類性バイオマスや二酸化炭素の活性化およびその新規利用法の開発に重点を置いて研究を推進する。これにより、有機合成における、石油・天然ガスなどの化石資源からの脱却となり得る基盤技術を確立する。
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