CO2の還元反応は、現在盛んに研究されているが、そのほとんどはギ酸までにとどまっており、ギ酸をさらに還元しメタノールに変換できる系は限られている。通常還元には、金属ヒドリド種が用いられる。本プロジェクトでは、複数の金属ヒドリド種が1つのCO2分子と相互作用できる反応場を構築することによって、CO2をメタノールあるいはその等価体へ誘導することを目指した。 大環状4座ホスフィンに2つのPt(PPh3)ユニットを内包させた錯体に、水素気流下でPPh3の引抜剤としてBH3を過剰に加えた.その結果、反応溶液の31P{1H}NMRの測定からPPh3- BH3の付加体と共に目的のヒドリド錯体の生成を確認した. このヒドリド種の単離を試みたが、分解反応が進行することが判ったため、単離することなくCO2との反応に用いた。H2気流下で、同位体ラベルした13CO2を加え、反応を13C NMRで追跡すると、13CO2の主な還元生成物としてメトキシ基の生成を示すquartetが51.3ppmに観測された。ここで得られたメトキシ化合物は、各種スペクトルよりトリメトキシボロキシンであるとわかった。ここで、共存する過剰分のBH3を減らすとトリメトキシボロキシンに代わってホルメートに帰属できる13C NMRシグナルが164.0ppmに観測された。このことは、大環状4座ホスフィン白金錯体は、ギ酸生成のみを担っており、生じたギ酸をBH3がトリメトキシボロキシンに変換していることを示している。種々反応条件を変えた結果、金属錯体に対して、10当量のメトキシ基が得られた。
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