研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105537
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久枝 良雄 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70150498)
|
キーワード | 酸化チタン / ビタミンB12 / 超求核性 / ルテニウム錯体 / 光増感剤 / ローズベンガル / ポリマー / ラジカル反応 |
研究概要 |
金属酵素は環境適合型触媒系の1つである。本研究ではラジカル酵素であるビタミン_<12>の機能に着目し、新しい分子活性化法の開拓とラジカル型直戯的物質変換反応を行った。触媒系の設計のコンセプトとして、金属酵素の活性部位の構造から重要な金属錯体部位を取り出し、単純化した金属錯体を分子設計した。本年度は以下の成果を得た。 1)B_<12>-TiO_2ハイブリッド触媒の創製 酸化チタンとビタミンB_<12>誘導体の組み合わせにより、B_<12>TiO_2ハイブリッド触媒を創製した。本触媒系においては、アルコール溶液中で紫外線照射によりビタミンB_<12>誘導体が還元活性化し、超求核性のCo(I)種が生成した。本触媒を用いた有機ハロゲン化物の脱ハロゲン化反応やラジカル中間体を経由した物質変換反応に成功した。また、イオン液体中ではビタミンB_<12>誘導体が光増感剤と触媒としての両機能を有する事を見出した。 2)B_<12>-ルテニウム触媒系の創製 可視光により活性化できる増感剤としてルテニウム錯体を用いた反応系を構築した。ルテニウム錯体としてトリスビピリジン錯体を用い、犠牲還元剤としてトリエタノールアミンを用いると、脱酸素条件では可視光照射によりビタミンB_<12>誘導体が還元活性化し、脱ハロゲン化反応が進行した。更に、ビタミンB_<12>誘導体とルテニウム錯体をポリマーに固定化した触媒の構築に成功し、希薄溶液中でも反応が効率良く進行することを見出した。 3)B_<12>-有機光増感剤触媒系の創製 可視光を利用し貴金属を用いない光増感系として、有機増感剤とビタミンB_<12>誘導体の組み合わせで反応が効率良く進行する系を見出した。有機増感剤としてローズベンガルを用いると少量の増感剤存在下で反応が進行し、種々のラジカル型有機合成反応に利用出来ることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然金属酵素の一つであるビタミンB_<12>に着目し、光増感剤とB_<12>モデル錯体との組み合わせにより、新規な分子活性化触媒系の開発に成功した。これは新しいラジカル発生系であり、当初の研究目的達成に向けて順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究は進展しているが、新たに開発した分子活性化(ラジカル発生)を利用した種々の反応を実施し、本触媒系の適用範囲を明らかにする必要がある。また、触媒の繰り返し使用や耐久性について検討する必要がある。
|