研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23105539
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
尾野村 治 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60304961)
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キーワード | C-H結合活性化 / 酸化 / シクロアルカン / シクロヘキサン / アジピン酸 / 環境調和 |
研究概要 |
ナイロンやポリエステルの原料として重要なアジピン酸の製造にはシクロヘキサンをいったんK/Aオイル(シクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物)に酸化し、これを硝酸で酸化する二段階法(DuPont法)が採用されている。大量の窒素酸化物が発生するこの方法の代替法として、シクロヘキサンからアジピン酸を合成できる環境に調和した酸化反応を開発することが目的である。予備的な検討により室温で、酸素雰囲気下、トリフルオロ酢酸中、1当量の過マンガン酸カリウム、3当量の亜硝酸ナトリウムを用いれば、シクロヘキサンからアジピン酸に69%収率で変換できることを見出していた。しかし、この反応には収率が不十分である、毒性の高い過マンガン酸塩を量論量用いる、多量のTFA中で行う、等の問題点があった。 そこで、これら問題点を解決すべく以下の項目を検討し、下記する重要な成果を挙げることができた。 (1) 従来の開放系容器に替えて密閉容器で反応することにより、酸素雰囲気下ではなく空気中でも収率94%に改善できた。密閉容器中の反応は一般性があり、炭素数の異なるコハク酸等のジカルボン酸合成にも適用可能であることもわかった。 (2) シクロヘキサンの不活性なC(sp^3)-H結合を活性化できる触媒の探索を行った。この第一段階の酸化には、過マンガン酸カリウム塩以外に、過酸化水素や過酸化水素尿素錯体、あるいはコバルト(II)トリス(2-ピリジルメチル)アミン錯体等が有効であることがわかった。ただし、前者は低収率であること、後者は一挙にアジピン酸まで酸化できていないという解決すべき問題点が残っている。 (3) 亜硝酸ナトリウムを硝酸ナトリウムに替えても同等の成績が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において最も解決すべく課題である「過マンガン酸塩の使用低減」に繋がる2つの成果を得た。即ち過マンガン酸塩を用いた場合も反応装置を工夫することにより、収率を大幅に改善できた。また、過マンガン酸塩を用いなくても、第一段階の酸化を起こせることを明らかにできた。以上から、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
過マンガン酸塩の使用量低減、代替触媒の探索を継続するとともに、亜硝酸塩の使用量低減及び代替酸化剤の探索、トリフルオロ酢酸の使用量低減及び代替酸の使用可能性の確認を行う。
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