光子やニュートリノによる輻射輸送とガスの流れを同時に求めるられる、輻射流体力学シミュレーションコードを作成した。 このコードでは、輻射の角度分布を 0次と1次のモーメントにより近似するM1モデルを採用しているので、輻射輸送方程式を完全に解く場合に比べ計算量が大幅に削減できる。一方で、従来の拡散近似では扱えなかった吸収体による影を再現できる。本年度は(1) 輻射を波長(エネルギー)分解能を持たせる、(2) 時間空間ともに2次精度の解を求める、(3) 流体力学と結合する、の3点について拡張を行った。本計算コードの特徴は、接する格子点の情報だけを用いた陽解法を採用していて、反復解法を排除していることである。従って超並列計算機用に書き直しやすい形である。 本コードのテストとして、若い星の周囲に見られる原始惑星系円盤の平衡構造と時間進化を求めた。原始惑星系円盤の主な熱源は中心星からの可視光照射で、遠赤外線放射が主な冷却減である。吸収係数の違いから、星からの照射が届く範囲は波長により異なる。可視光は表面で吸収され、それにより暖められたダストからの中間赤外線が円盤の中心部分を暖める。従来このような構造の計算にはモンテカルロ法が用いられているが、その方法では静的な平衡解しか求められず、動的な円盤の流体力学を追うことができない。本研究課題で開発した方法を用い、平衡解だけでなく円盤の鉛直方向の振動も追えることが確認できた。またこの円盤を近赤外線やサブミリ波連続光で観測した場合に期待される画像を求めるコードも開発した。
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