研究領域 | 素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明 |
研究課題/領域番号 |
23105707
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 助教 (60577881)
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キーワード | 格子量子色力学 / 相転移 / 有限温度・密度 / 計算物理 / 素粒子論 |
研究概要 |
本年度は主に、化学ポテンシャル入りのクオーク行列式の位相計算を行った。これは、符号問題の理解に不可欠な量であり、その振る舞いの理解が本研究のテーマである。まず、計算の手始めとして、理論構造がよく分かっている四種類のクオークを含んだ系における位相を計算した。その結果、代表者が予言していた位相の振る舞いが確認された。ある種の近似を用いた予言が定性的に厳密計算結果を説明できることが明らかになり、位相の振る舞いの理解を深めたことは非常に意義があり、その理解が今後の研究に活かされることが期待される。 この計算はこれまで誰も達成したことのない厳密計算であり、これまでの近似計算に比べればその重要性は言うまでもない。 さらに、その系の温度と化学ポテンシャルで張られる二次元空間の相構造を調べ、一次相転移の兆候がみられることを確認した。これらの結果をまとめ、論文として発表し査読審査も通過した。現在は、校正待ちの状況である。また、これらの研究成果を研究会(国内1回、海外1回)や講演セミナー(1回)で発表を行った。 これら一連の計算には、筑波大学計算科学研究センターのT2K筑波システム(汎用クラスター計算機)を用いた。代表者がこれらの計算を実行するため、学際共同利用を申請し採択されたため、年間で5500時間(8ノード換算)を無償で使用することができた。一方、GPUクラスター計算機を使う計画については、年度始めに科研費使用制限がかかったため、購入を遅らせ年度末に搬入したため今年度の実績はない。これは来年度の課題とする。 上述のように本年度は、四つのクオークを含んだ計算ではあり、現実世界とは異なるが、方法論の確立という意味では大きな前進であった。これで研究計画の第一段階は成し遂げられたと言える。今後は、三つのクオークを含んだような現実世界に近い計算を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
汎用クラスターを使用した位相計算は順調に進行している。計算コードや解析コード開発は順調に進んだ。また、計算時間確保のために、申請した学際共同利用(筑波大学計算科学研究センター)に採択されたため、十分な計算資源を得る事ができたことが、順調に計画が進んだ理由である。GPU計算機を用いた計画はあまり進んでいない。その理由は、今年度始めに科研費使用制限が出たため、大型設備の購入を控えたことが挙げられる。この影響により、購入・搬入が年度末にずれ込み、本年度ではGPUを使う時間を確保することができなかった。これは次年度の課題とする。上記のように計算時間の確保ができたため、位相についての詳細な情報を得る事ができた。よって、初年度の目的であった、方法論としての確立は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度では方法論が確立したので、次年度はそれを用いた応用的な計算に研究の重心を移すことになる。具体的には、現実世界により近い3つのクオークの効果を取り入れた計算を行う予定である。この系の相構造を調べることが本研究の最終目標である。一連の計算には、筑波大学計算科学研究センターのT2K筑波システム(汎用クラスター)を使用する予定である。 本年度のノウハウと実績を元に、来年度もスムーズに大規模計算を行えると考えている。一方、GPU計算の方も同様にコード開発を進め、大規模計算への先鞭をつける。後者の方が有利であると判断した場合には、筑波大学計算科学研究センターにあるGPUクラスターHA-PACSの使用も視野に入れている。
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