研究領域 | 素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明 |
研究課題/領域番号 |
23105709
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長滝 重博 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (60359643)
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キーワード | ガンマ線バースト / 極超新星爆発 / ブラックホール / 爆発的元素合成 / R-Process元素合成 / コラプサー / 一般相対論 |
研究概要 |
ガンマ線バースト・極超新星の発生メカニズムは未解明なことが多く、極超新星の明るさを決定している56Niがいつ、どこで、どれだけ生成されているのか解明出来ていません。その原因は、コラプサーのダイナミクスをシミュレートするグループと、元素合成のシミュレーションを行っているグループがそれぞれ別個の計算をしており、ガンマ線バースト・極超新星の統一的な描像が描けていない点にあります。この状況を打開するため、本研究では極超新星に於ける56Ni生成問題をコラプサーのダイナミクスと絡めて研究するという、世界初の試みを展開します。これにより極超新星の56Niがいつ、どこで、どれだけ出来るかということを明らかにします。また、ガンマ線バーストジェット領域は高エントロピー領域となることが期待されますので、R-process元素合成が起こる可能性を検証します。平成23年度年度はまず、自身が一般相対論的磁気流体コードによるコラプサーのシミュレーションを行い、その温度密度の様子からR-Processが起きそうな領域がありそうかどうかを詳細に調べました。ブラックホールの回転速度を色々変えたシミュレーションを行ってみた結果、高速に回転しているケースが最もR-Process元素合成に望ましい環境が達成されることが確認されました。この結果により今後のコラプサーに於けるr-processや56Ni生成研究の調査範囲を絞り込むことが出来ました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年1月に、ガンマ線バースト数値計算結果の分析を行ったところ、これまで世界中の誰も報告していなかった、ガンマ線バーストジェット加速機構の鍵を握ると思われる磁気的不安定性の兆候が発見された。そこで更に解析を行い、その結果を国際研究集会「Gamma-Ray Bursts 2012」(ドイツ、ミュンヘン、2012年5月7日-5月11日)にて発表した。反応は上々であり、大きな成果を出すことが出来たと確信している。また大質量星の鉄コアにおけるニュートリノ冷却・加熱を 近似的手法によって取り込んだ2次元の重力崩壊の特殊相対論的磁気流体数値実験を行い、ブラックホール周りの降着円盤の長時間の動的変化、それに伴って放射される重力波放射について調べた。結果、遠心力の効果で扁平になった準定常状態の降着円盤から「非等方に放射される」ニュートリノが重力波の源として最も大きな寄与を持つことを明らかにした。この重力波は10Mpcの距離にあるコラプサーに対して、DECIGOをはじめとする次世代重力波検出器の検出限界内にあることを指摘できたなど、大きな成果を挙げることも出来た。
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今後の研究の推進方策 |
ガンマ線バースト・極超新星の発生メカニズムは未解明なことが多く、極超新星の明るさを決定している56Niがいつ、どこで、どれだけ生成されているのか解明出来ていません。その原因は、コラプサーのダイナミクスをシミュレートするグループと、元素合成のシミュレーションを行っているグループがそれぞれ別個の計算をしており、ガンマ線バースト・極超新星の統一的な描像が描けていない点にあります。この状況を打開するため、平成24年度には極超新星に於ける56Ni生成問題をコラプサーのダイナミクスと絡めて研究するという、世界初の試みを展開します。これにより極超新星の56Niがいつ、どこで、どれだけ出来るかということを明らかにします。また、ガンマ線バーストジェット領域は高エントロピー領域となることが期待されますので、R-process元素合成が起こる可能性を検証します。特に平成24年度は、原子核ネットワークを流体コードに組み込むことに成功し、ジェット状超新星爆発に於ける56Niの生成量を従来よりも正確に求めることに成功させます。ネットワークはまだ小さく、原子核同位体の組成比を議論することは出来ない状態ですが、流体計算と原子核ネットワークを組み合わせることが出来たことは大きな進展と言うことが出来ます。更にネットワークを広げ、より正確にコラプサーモデルに於ける56Ni, R-process核の生成を議論出来る展望を持つことが出来るようにします。
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