公募研究
低密度原子核物質の非一様構造を、構造を仮定しない計算によって調べた。核子密度をソースとする中間子場と、局所密度近似のもとで表される核子と電子からなる系を、ローレンツ変換に対して不変な形で定式化した、相対論的平均場および局所密度近似(RMF+Thomas-Fermi)模型による数値計算を3次元空間で解いた。無限系を模すために、周期的境界条件を課したセルを用意し、その中に非一様な構造が数周期分現れることが可能なように、十分大きなものを用いた。次のような結果が得られた。標準原子核密度以下では原子核物質が非一様なクラスター(原子核)を形成し、その最も安定な形状が、密度が高くなるにつれて、球形から円柱、板、円柱の穴、球形の穴へと変化する、いわゆるパスタ構造の出現が予測されていた。この予測は多くは形状の対称性を仮定した計算によってされていたが、陽子含有率を固定した原子核物質に我々の手法を適用したところ、パスタ構造の出現とそれによる物質の硬さの変化について、従来の研究結果と定性的に同じ結果が得られた。低密度において球形原子核から構成される物質の作る格子構造が体心立方となるというのが定説であったが、我々はそれが面心立方になることを初めて指摘した。従来の議論では原子核の密度や大きさを固定した上で格子のクーロンエネルギーだけを比較していたが、原子核のサイズや原子核内での陽子の密度分布が、格子構造によって影響を受けることがその原因と分かった。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究実施計画では計算プログラムの完成と、それを用いた原子核物質(陽子含有率一定の物質について)の構造計算と、基本的なパスタ構造の出現の確認が予定されていたが、それをほぼ達成した上、ベータ平衡物質も含めた球形核の格子構造に関する新たな結果が得られた。
まず球形核の格子構造に関する議論を深める。また、高密度での中間子凝縮によるパスタ構造、有限温度でのパスタ構造の研究を行なう。
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Nucleation Theory and Applications, Dubna JINR(ed.J.W.Schmelzer, G.Roepke, and V.B.Priezzhev)
巻: 5 ページ: 301-312