研究領域 | 素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明 |
研究課題/領域番号 |
23105715
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
出渕 卓 独立行政法人理化学研究所, 理論研究グループ, 客員研究員 (60324068)
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キーワード | 大規模疎行列 / モンテカルロ計算 / 固有値・固有ベクト |
研究概要 |
本研究計画では、次世代計算機資源上で、過去10年余にわたる研究で有用性が広く認められてきているカイラル対称性を保った格子クォークのシミュレーションの計算方法(アルゴリズム)を研究している。本年度は、物理量の計算の中で最も計算量の多い部分である、クォーク伝搬間関数(ディラック行列の逆行列)を如何に効率よく求めるかということを目標に以下のことを行った。 まず、エルミート化されたディラック行列のゼロ付近の固有ベクトルを拡張されたLanczosで求める事に成功した(Implicitly restarting Lanczos method with Polynomial acceleration with shift)。先行研究に比べて、固有ベクトルを一括して求めず、固有値スペクトルの異なる部分部分を別々にシフトしながら求められること、固有ベクトルの圧縮・復元などが新しい点である。 この固有ベクトルを元に、クォーク伝搬関数の計算を加速する(deflation)に成功した。我々の渡航としている問題の中で中くらいのサイズ(24x24x24x64 x 16)の場合で、クォークの質量が物理的なup/down quarkに比べて約4-6倍の場合に約12倍の高速が実現された。 つぎに、この固有ベクトルを正確なクォーク伝搬関数の近似として使い、求めたい物理量の統計平均をより正確に求めるLow Mode Averaging(LMA)を行った。小さい固有値に属する固有ベクトル(low mode)が支配的な物理量に関しては、同じ計算量で、統計誤差を大きく削減することが出来た。 また、現在次世代計算資源の上での効率的なディラック行列の計算コードを開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする物理量の一つである、核子の電気双極子では、小さい固有値に属する固有ベクトル(low mode)が必ずしも支配的でないため計算の統計誤差が思うほど下がらない。
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今後の研究の推進方策 |
上記のlow modeが支配的でない物理量についても統計誤差の縮減を行えるようなアルゴリズムが必要であり、現在開発中である。調べてみると、実は多くの物理量でlow modeは必ずしも支配的でないことがわかり、このアルゴリズムの開発に成功すれば多くの困難な計算に道が開ける。
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