本研究は、2カ年の期間内に、ラムダハイパー核のヘリウム同位体の構造計算を行い、その構造を系統的に解析すること、ラムダ・シグマ結合相互作用が中性子数の増加に伴いどのように変化するのかを解明することを目的として行いました。 本研究課題を遂行するためにはラムダ・シグマ結合相互作用をあらわに取り入れた計算が必要ですが、ラムダ・シグマ結合相互作用の主要な成分は、バリオン間相互作用の中で重要かつ従来の模型空間では直接的な扱いが難しい「テンソル力」です。そのため、通常核においてすでに確立されていたテンソル力の扱いに特化した巨大次元殻模型(TOSM)をハイパー核にも適用できるよう計算コードの開発を行ってきました。 本研究で新たに開発されたラムダ・シグマ結合相互作用をあらわに取り入れたTOSM法により、ラムダハイパー核のうち質量数が3の水素、質量数4の水素およびヘリウム、質量数5のヘリウムの各状態のエネルギー準位を計算し、ラムダ・シグマ結合相互作用の寄与を調べました。また予備計算の段階ではあるもの、中性子過剰ラムダハイパー核である質量数7のヘリウムの各状態についてもエネルギー準位の数値計算結果を得ました。そして、本研究で注目しているラムダ・シグマ結合相互作用のエネルギーに対する寄与は、ラムダハイパー核を束縛させるのに重要な役割を果たしているという結果を得ました。これはすでに行われている精密少数計算の結果と一致するものです。 これらの計算結果の一部と、すでに行われている精密少数計算の結果とを比較したところ、TOSM法は定性的にはよい一致を見せています。しかしながら、本研究でのTOSM法は、定量的にはまだ十分でない段階であることもわかりました。定量的な議論を可能にするには、TOSM法にいくつかの改良が必要であり、今後の課題として取り組んでいく予定です。
|