本研究では、3つの課題を下記の通り設定したのでそれぞれの実績をまとめる。 (1)1970年以降40年間の海洋混合層変動要因とその変化の確認:1971年~2009年について、黒潮続流流路変動を表す指標を作成、流路変動に10年スケールの変動と数年スケールの変動が卓越すること、前者は1990年代以降顕著であるのに対し、後者はそれ以前に顕著であるという違いを確認した。また10年スケール変動については1990年以降北太平洋中央部の風応力に対して4~5年遅れで応答していると見られること、1970年代、80年代についてはそれ以外のより局所的大気変動との関係が示唆されることを確認した。 (2) 混合層変動と亜熱帯循環系の構造変化、大気循環場との関係の解明:Pacific decadal Oscillationや亜熱帯での変動との関係を中心に調べたが明確な関係を見いだすには至っていない。 (3)混合層における塩分の変動の実態とその要因分析:1960年~2011年のデータに基づいて、当該海域の亜表層塩分プロファイル時系列を作成し、季節変動および年々変動の実態を初めて明らかにした。季節変動は亜熱帯モード水より上層に顕著で、年々変動は混合層より下で亜熱帯モード水上部の深度に顕著である。また年々変動には10年スケール変動が認められるが、PDOなどとの関連は明らかではなく、今後の研究課題である。 これらの研究成果は、小橋ほか(2013)として沿岸海洋研究、50(119p~129p)発表したほか、岩坂他、志村他、で日本海洋学会2013年春季大会での講演で発表している。
|