2009年台風Choi-wanについて、水平解像度6kmの非静力学大気波浪海洋炭素平衡結合モデルによる数値シミュレーションを実施し、その結果をNOAA/PMELのKEOブイ観測データと比較検証した。計算された台風は、観測から推定される通過時刻よりも3時間ほど遅く、KEOブイ地点を通過した。しかし中心気圧の深まりについては、計算結果と観測結果は整合していた。この比較的遅い移動速度は、台風通過により生じる近慣性流及び乱流混合に影響し、結果としてKEO観測点に相当するモデル格子点で計算された海面水温、海面塩分、無機溶存炭素は観測結果よりも低くなった。そこで台風の位置に合わせた座標系で見た点(ブイの南側の点)で計算結果と観測結果を比較した。この場合、海面水温の低下は変わらなかったものの、塩分は初期時刻から増加し、観測結果と整合的であった。また海水温29℃で規格化した二酸化炭素分圧は初期時刻より増加し、観測結果とより整合的になった。以上の結果から、黒潮続流域の台風通過による海面二酸化炭素分圧の変動は海面水温だけで決まるのではなく、塩分や無機溶存炭素も重要であることがわかった。 2011年の台風Ma-on、Talas及びRokeについて数値シミュレーションを実施した。Ma-onとTalasについては、台風による海水温低下が台風強度の計算に重要であった。一方、Rokeについては、台風による海水温低下の効果を考慮した場合、水平解像度1.5kmでも中心気圧の急激な深まりを再現することができなかった。Talasについては、側面境界条件に関するパラメータを変えた数値実験を実施した。このパラメータの変更により、中緯度において進路の違いが見られたものの、後に発生する台風Noruの発生地点には影響を及ぼさなかった。またTalasによる海面水温低下によりNoruの発生時刻は遅くなった。
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