研究実績の概要 |
本研究では、温度応答性ポリペプチドを配した磁性粒子の設計とその特性評価を行うことを目的とした。本年度は、異なる長さ(50-150 mer)の温度応答性ポリペプチドの遺伝子設計、磁性細菌を用いた磁性粒子上への発現、及び温度変化による磁性粒子上の界面制御を試みた。温度応答性ポリペプチドとして、エラスチン様ポリペプチド(アミノ酸配列:(VPGVG)n)の n = 10, 20, 30 となるように設計した。またこの時の遺伝子は、磁性細菌のコドン頻度に合わせてDNA配列を設計し、アンカー遺伝子と融合することで磁性粒子上への局在を可能とした。各融合遺伝子を導入した磁性細菌からタンパク質-磁性粒子複合体を抽出し、SDS-PAGEにより発現を確認した結果、目的のサイズに融合タンパク質が確認できた。また、ELP鎖長が増加することにより、わずかに融合タンパク質の発現量が低下したことが示された。次に50 mer のELP-磁性粒子複合体表面の温度変化による疎水性の変化を蛍光プローブにより評価した。その結果、コントロールである磁性粒子においては、蛍光強度に変化が観察されないのに対し、ELP- 磁性粒子複合体においては20℃から60℃に温度上昇することにより蛍光強度が増大することが示された。さらに温度上昇による粒子径の変化を粒度分布測定により評価した結果、ELP-磁性粒子複合体において温度の上昇に伴い粒子径が2倍以上、増大することが示された。この結果は温度上昇に伴い、磁性粒子表面の疎水性度の増加により凝集塊形成が促進したと考えられた。また、これらの凝集塊形成は、温度を下げることで、再度分散状態に変化することが示され、可逆的な現象であることが示された。以上より、本研究では磁性粒子界面を温度によって制御できることが示された。
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