研究概要 |
(背景)アルツハイマー病原因物質であるアミロイドβペプチド(Aβ)は重合し、オリゴマー(oligomer)から線維(fibril)を形成する。Oligomerが非常に強い細胞毒性を持つと考えられているが、Aβの膜毒性機構は解明されていない。細胞膜中のコレステロール(Chol)は、アルツハイマー病のリスク因子と考えられている。しかし膜中Cholの酸化物(7-ケトコレステロール(7-keto))が及ぼすAβの膜毒性は明らかになっていない。本研究では、DOPC, DOPC/Chol, DOPC/Chol/7-ketoにおけるAβの膜局在・膜挙動解析を行い、Cholおよび7-ketoとAβの膜毒性について考察した。 (方法)Aβは蛍光標識と未標識の2種類を使用した。37℃でAβ-40は0, 24, 120時間、Aβ-42は0, 12, 48時間インキュベーションし、線維形成を行なった。各インキュベーション時間のAβ-40, Aβ-42 をOligomer、Pre-fibril、Fibrilとした。脂質膜はDOPC/Chol/7-keto = 100/0/0[2], 50/50/0, 50/40/10で混合し作成した。 (結果・考察)Chol含有膜は、DOPC膜よりAβの蛍光強度が低くなった。これは、CholはAβの膜への吸着を妨げ、膜の形態変化を起こしにくくする防護的役割を示している事を示している。また、DOPC/Chol/7-keto膜はDOPCおよび DOPC/Chol膜よりもAβの蛍光強度が高かった。これは、7-ketoがAβの膜への吸着を促進していることを示している。以上の解析から、Cholに比べて7-ketoは、Aβの吸着を促進し、膜毒性と関連した形態変化を起こしやすくすることが明らかになった。
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