研究概要 |
本年度は以下の2つの課題に関して研究を進め、それぞれ、公表論文という形で成果を得る事が出来たので、順に紹介していきたい。 1)細胞サイズ微小空間特異性の実験的検証:特に液滴系の活用 本申請者らは、任意の濃度の蛋白質・基質やDNA,RNAなどを取り込んだ、細胞サイズリポソームの構築手法の確立に向けての研究を進めてきている。特に、その中でも、リン脂質を含む油層中に細胞サイズ水滴を形成させ、それをバルクの水層に移行させることにより、細胞サイズのリン脂質小胞を得るといった、実験手法が極めて有用であることを報告している(A.Yamada et al.,Langmuir,2006)。 本年度は、このような細胞内の環境の特徴の一つである、反応空間の体積に着目して研究を行い、微小空間であるほどタンパク質合成反応が亢進する事を明らかにした。 2)細胞サイズのリン脂質小胞が示す特異な物性の解明 細胞膜は単成分では無く、多成分であり、その様な場合に相分離現象が起こる事が知られている。本年度は、構成成分の中に高分子の様な体積力(エントロピー的な理由による斥力相互作用)をもつ分子が存在する場合に、相分離がどのようなるかという視点で研究を行った。その結果、ある割合を境にして急峻な転移を起こし、単一ドメインが分かたれて非常に多数の小ドメインになる事が明らかになった。これはラフトのモデルとしても興味深い結果である。
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