公募研究
本研究では、外部刺激により親水性・疎水性を制御可能な刺激応答性ソフト表面を有する高分子微粒子を泡安定化剤として使用することで、高分子微粒子の気液界面への吸着、および界面からの脱離をコントロールし、オンデマンドでの安定性が制御可能な微粒子安定化泡システムの構築を行うことを目的としている。平成23年度は、下記2項目について検討を行った。1.刺激応答性ヘアリー高分子微粒子の精密合成および評価乳化重合、分散重合およびリビングラジカル重合技術を活かし、粒子表面にpHによって親疎水性が変化する分子量、分子量分布の制御された刺激応答性高分子ヘアーを有する高分子微粒子の精密合成を行った。刺激応答性高分子として、pHによって水への溶解性をコントロールできる高分子を取り上げた。生成粒子の粒子径、形状、組成について、動的光散乱法、レーザー回折粒度分布測定装置、走査型電子顕微鏡、元素分析装置、赤外分光分析装置、核磁気共鳴分光装置を用いて評価を行った。また、粒子表面に存在するヘアー層(ソフト表面)について、X線光電子分光測定、ゼータポテンシャル測定、水中原子間力顕微鏡測定を行った結果、粒子表面に刺激応答性ヘアーが存在し、そのヘアーが、phによって、水中で溶解、沈澱していることを確認した。2.刺激応答性ヘアリー高分子微粒子の界面活性能評価項目1.にて合成した刺激応答性ヘアリー粒子群の中から、水中にて重力により沈降しない粒子を選択し、粒子表面が高い親水性を示すpH、および適度な疎水性を示すpHにおいて気液表面張力を測定することにより、粒子の界面活性能を評価した。その結果、粒子が疎水的表面を有する(ヘアーが水媒体中で沈澱している)pHにおいて、粒子は気液界面に吸着し、一方、粒子が親水的表面を有する(ヘアーが水媒体中に溶解している)pHにおいて、粒子は界面に吸着せず水媒体中に分散したままであることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度の研究計画通り、研究代表者の有する乳化重合、分散重合、リビングラジカル重合技術を駆使することで、刺激応答性高分子ヘアーが表面に生えた、高分子微粒子の合成に成功した。さらに粒子の界面活性能についても、計画通り目標を達成することができた。泡の安定化剤として使用するヘアリーの気液界面吸着現象については、当該新学術領域内の研究者との連携を行っており、当初の計画と比べ、より詳細な評価が可能になると期待できる。
平成24年度の交付申請書に示した研究計画通り、研究を推進する予定である。すでに平成23年度に、平成24年度の研究の足掛かりとなる結果も得ており、スムーズに研究をスタートできると考えられる。また、当該新学術領域研究のメンバーとの連携を通じて、「ソフト界面」の学理の体系化に努める。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (29件) 備考 (1件)
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