糖鎖クラスターは、病原体に対する受容体としての親和性に影響している。そこで、脂質膜のラフトの構成成分と病原体との相互作用を検討した。脂質単分子膜を固体基板上に累積した脂質二分子膜を用いて糖脂質膜の構造と機能の解析を行なった。GM3などのガングリオシド含有膜におけるラフト構造の形成におけるコレステロールの影響をAFMで観察した。その結果、コレステロールの増加に伴い、ガングリオシドが局在化して糖脂質集合体を形成していた。また2種類のガングリオシドを共存させた場合には、ラフト内に複数の糖脂質が共存していることが示唆された。また、ガングリオシドと中性の糖脂質が共存することで、ガングリオシドの糖鎖認識能が向上することも見いだした。 脂質膜での糖鎖認識に加えて新たな糖鎖アレイの開発も行なった。糖鎖アレイの開発においては、固定化する糖鎖の入手方法が困難である場合も多い。そこで、糖鎖アレイに固定化する糖鎖を糖鎖プライマー法により作製した。アジド基を有する糖鎖プライマーを動物細胞に投与して得られるオリゴ糖鎖を用いることで、固体基板上にクリック反応で固定化する手法を開発した。MDCK細胞では、糖鎖プライマー法により硫酸基やシアル酸の結合した生成物が主成分として観察され、これら生成物をクリック反応の条件を最適化して固体基板への固定化を行ない、糖鎖認識の検出を行なった。インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)を用いた実験では、酸性糖鎖への強い相互作用が見られた。 以上の様に、糖鎖の集合状態を制御した界面での糖鎖認識は、疾病に関わる分子との相互作用を検出するのに有用であることが示された。界面へのと糖鎖提示方法を工学的に改善することで診断などの分野に展開できることが期待される。
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