研究領域 | ソフトインターフェースの分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23106727
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
渡邉 順司 甲南大学, 理工学部, 准教授 (60323531)
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キーワード | ブロックポリマー / 濡れ性 / 界面 / 表面偏析 / 診断デバイス / 非晶性 |
研究概要 |
医療分野で実施される診断・検査において、患者への侵襲を抑えるために検体試料の少量化が進んできている。この背景には、診断デバイスの微細化が進んできており、デバイスの材料特性が性能を左右するようになってきている。特に、試料と接触する表面特性を規定することが重要とされ、疎水性表面から親水性表面への応答速度の向上が求められてきている。本研究では、水との接触により瞬時に親水化する材料表面を創製することを目的として、疎水性のポリ(トリメチレンカーボネート)と親水性のポリエチレングリコールが一つにつながったブロックポリマーに着目した。合成条件の最適化により、有機触媒存在下にて、トリメチレンカーボネートの開環重合により種々の重合度のブロックポリマーが得られることがわかった。このポリマーの表面特性を検討するために、ガラス基板にディップコーティングを行い、静的接触角測定装置を用いて表面の濡れ性を評価した。その結果、接触角測定用の水滴を材料表面に付着させた直後から、水滴の形状が変化していくことが明らかとなった。表面と液滴のなす角である接触角を1秒間ごとに読み取ったところ、わずか5秒間で70度から40度に低下していた。このことは、水と接触すると直ちに材料表面が水となじみやすい親水性に変化したことを示していた。このような親水化に強く影響するパラメータを見出すために、ブロックポリマー中の親水鎖の鎖長に着目した。その結果、親水鎖の鎖長が短くなるにつれて、材料表面が親水化するのに必要な時間が増大することが明らかとなった。具体的には、親水鎖の数平均分子量が5,000g/molと350g/molを比較した結果、前者では数秒間で親水化が達成できたのに対して、後者では数時間が必要であった。以上のような研究実績について、学術論文としてまとめて情報発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請時に想定していた高速親水化の時間的な位置づけは、数分程度で完了する表面特性の変換であった。実際に研究を進めた結果、数秒程度で表面特性を親水化できることを見出した。材料の種類によっては、かえって時間を要するものも得られ、親水化するのに必要な時間を支配しているパラメータの一つが親水鎖の鎖長であると判断でき、当初の予想を上回る成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題の一つは、材料の表面あるいは内部に機能性分子(タンパク質を含む)を取り込ませることであり、このような材料表面を診断デバイスとして応用することにより、検体試料の前処理に活用できないかと考えている。予備的な検討結果では、分子量の小さな特定の有機化合物が高濃度で取り込まれることを見出している。本研究で創製したブロックポリマーに対して、有機分子の構造あるいは特性と取り込まれる量の相関について明らかにできれば、高速親水化とともに機能分子による高性能化が達成できる。
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