研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107502
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 貴義 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60270790)
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キーワード | 希土類フタロシアニン / 金ナノ粒子 / 無機有機複合体 / 量子伝導 / 磁性 |
研究概要 |
平成23年度においては以下の項目について、重点的に研究を進めた。 ・金ナノ粒子複合体の形成 金ナノ粒子複合体の作製は金ナノ粒子合成で広く利用されているBrust法で行った。この方法の利点は作製条件により金ナノ粒子のサイズを比較的容易に変えることができる点である。粒子サイズにより帯電エネルギーが大きく変化し、結果として導電挙動に大きく影響するが、ボルフィリン誘導体を用いた場合の結果から、量子伝導を評価するに当たり、2nm-4nm程度の粒径が好適であると考えられ、本研究においてもこの程度の粒径をもつ単分散の金ナノ粒子を得るための条件検討を行った。TEMによる観察から2nm-5nm程度の粒径のナノ粒子が生成している事を確認した。 ・金ナノ粒子複合体の評価 UV-vis-NIRおよびRamanスペクトルにおけるフタロシアニン誘導体に対応する吸収から、複合体の中でのフタロシアニン誘導体の電子状態を評価した。また、金ナノ粒子複合体の組成から、フタロシアニン誘導体の表面吸着状態を評価した。組成を元素分析決定し、1粒子あたりのフタロシアニン誘導体分子数を求めることで、金ナノ粒子表面に単分子層がflat-on配向で存在している事を推定することができた。 ・金ナノ粒子集積構造の作製と評価 伝導度測定は、金電極上に金ナノ粒子複合体をドロップキャストすることでサンプルを作製した。低温での電気伝導度測定の予備実験から、collective-tunnelingが起こっている事、fスピンによりトンネル電子が散乱されている可能性がある事などが推定され、24年度において精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は予定どおりに進捗している。さらに、24年度に詳細に検討する事としていた、金ナノ粒子複合体の電気物性について、予備的な検討を行ったところ、collective-tunnelingが起こっている事、fスピンによりトンネル電子が散乱されている可能性がある事などが推定されるという、非常に興味深い結果を得、今後、研究のさらなる発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
電気伝導度測定において、collective-tunnelingが起こっている事、fスピンによりトンネル電子が散乱されている可能性がある事などが推定されたため、24年度においては、物性の詳細な検討を行う。fスピン系について、種々のバリエーションを検討するために、Dy,Er等の中心金属を持つ系についても範囲を広げて検討を行う。また、磁性および磁気抵抗の面からも検討を進める。
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