研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107503
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉澤 篤 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30322928)
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キーワード | 自己組織化 / 超分子化学 / 分子認識 / 液晶 / 階層構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、ダイナミクスの階層を液晶相に導入することで新規な運動モードを持つ高次構造を創成し、その方法論を動的融合マテリアル構築に提供することにある。得られる有機材料は揺らぎを持つ柔らかい素材であり、金属融合によりバイオミネラリゼーションにならう有機/無機ハイブリッド材料の創製、高画質表示媒体さらには医薬品への展開も期待される。本研究の特色は液晶相を形成する複数の要素を競合させることでフラストレーションを生じさせ、揺らぎを持つ動的階層構造を構築することにある。水素結合、ハロゲン結合、イオン相互作用などの比較的強い分子間相互作用とファンデルワールス力などの弱い相互作用を分子に組み込み、両者を競争させ強い相互作用を調節することで動的挙動を伴う秩序が出来ると考えている。 本研究課題では、金属融合を念頭に置き、テンプレートとして有用な動的階層構造を持つ液晶相の構築を一つの目標としており、平成23年度の成果として以下の階層構造液晶構築の新しい方法論3件が得られた。(1)新規なキラル三量体液晶を設計・合成し、分子形状、分子長軸方向のダイポールモーメントおよびキラリティーの競合により、分子の傾く向き(方位角方向)のランダムさを特長とする極性階層構造液晶相を形成することを明らかにした。(2)階層構造液晶相であるブルー相の発現温度幅を広くする方法論を検討するためにU型化合物を合成し、キラル化合物との混合によるブルー相の発現を調べた。その結果、ブルー相の温度幅拡大には分子二軸性の導入が有効であること、さらにはそれがベンド変形の弾性定数を小さくすることと相関があることを明らかにした。(3)層秩序を持つネマチック相(Nc相)の温度幅拡大にアルコキシ基の導入が有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規なキラル三量体液晶を設計・合成し、それが新しいタイプの動的階層構造液晶相であることを見つけた。(J. Phys. Chem. C2012, 116, 8678)
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今後の研究の推進方策 |
(1)極性階層構造液晶をテンプレートとした金属の融合 テンプレート液晶相に金属を融合させるために配位場と液晶形成基を併せもつ分子を設計し、そこに金属を取り込ませた後に、液晶相にこの金属錯体を添加する (2)ブルー相液晶への金属の融合 本項目については、弘前大学において温度幅の広いブルー相液晶材料を開発する。開発したブルー相材料をAO2班(構造構築班)九州大学菊池グループおよびAO3班(機能開拓班)大阪大学尾崎グループに提供し、共同研究を実施する。 (3)層秩序を持つネマチック相(Nc)への金属の融合 室温を含む広い温度範囲でNc相を発現する液晶組成物を開発する。次に、(1)で合成した金属錯体をこの液晶組成物に添加し、その構造を調べる。
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