公募研究
本研究は、マベガイ真珠バイオミネラリゼーションの分子機構についてタンパク質のX線構造解析およびタンパク質工学的解析により結晶形成能を解析し、アラゴナイト結晶形成に重要な構造要因を明らかにする。さらに構造情報に基づくタンパク質工学により、結晶のサイズ形態を制御する人工タンパク質・ペプチド超分子をデザインし、新規機能材料の創製を目指す。平成23年度は(i)ジャッカリン様レクチンおよび26kDa ADPリボシルトランスフェラーゼ(ART)様タンパク質のX線構造解析,(ii)アラゴナイト結晶形成機構の解明とリコンビナント発現系の構築,(iii)マベガイ足糸形成に関わるタンパク質の機能解明とそのリコンビナント発現について検討を行った。X線構造解析では、ART様タンパク質結晶化条件探索を行い、1条件で26P-1のタンパク質結晶を得、3.0A分解能のデータの取得に成功した。しかしながら、ラットのmono-ADP-ribosyltransferase(配列一致度17%)を用いた分子置換法では、構造決定することができなかった。また、大腸菌リコンビナント発現系構築のため、各種市販ベクター(pET,pGEX)、さらにガレクチン融合タンパク質発現系ベクターをもちいて発現したが、26kDaタンパク質の細胞毒性(アルギニン特異的ADPリボシルトランスフェラーゼ活性によるポリペプチド鎖伸張因子への作用)のため、変異や塩基の欠失が起こり、リコンビナントを得ることができなかった。一方、マベ足糸繊維質タンパク質成分として組織プロテアーゼインヒビター(TIMP)と相同性を示す15kDaおよび29kDaタンパク質を精製し、その特性を明らかにした。また、15kDaタンパク質のリコンビナント発現に成功した。
3: やや遅れている
X線構造解析に関しては、結晶化後,低分解能(~3A)ながらデータ取得に成功した。しかし、得られたタンパク質結晶が小さいためか、構造決定に十分な分解能ではない。したがって、結晶化条件の改良が必要であるが、リン酸化修飾や糖鎖付加による影響が考えられた。また、リコンビナント発現に関しては、アルギニン特異的ADPリボシルトランスフェラーゼ活性による毒性のため発現に至っておらず、全体としてやや遅れている。
26kDaART様タンパク質の細胞毒性のためリコンビナント発現に問題があるが、活性部位のAla置換変異体での発現、あるいはインテイン(ペプチドリガーゼ)反応を利用したpTWINベクターを用いての発現・再構築を検討している。
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