本研究では、カゴ型構造のシロキサン化合物をナノビルディングブロックとして用い、有機基で3次元的に連結することにより、無機ユニットと有機ユニットが分子レベルで複合化された多孔性の融合マテリアルを創出することを目的としている。平成23年度は、可逆的な結合を介したミクロ多孔性ネットワークの構築を目指し、以下の二つの検討を行った。 1)イミン系多孔体の構築 m-ホルミルフェニル基(-PhCHO)で修飾された二重四員環(以下D4R)構造のかご型シロキサンユニットと各種ジアミンとのC=N結合形成反応によって、高比表面積のイミン系多孔体合成に成功した。生成物の多孔性は用いるリンカーの種類に依存し、柔軟性を有するブチレンジアミンを用いた場合は無孔質となり、一方、剛直なフェニレンジアミンを用いた場合は多孔体が得られ、アミノ基がメタ位のときに最も高いBET比表面積(~900m2/g)を示した。反応が弱酸性の比較的温和な条件で進行するため、ネットワーク形成後もD4R骨格がほぼ完全に保持されていることが確認された。 2)水素結合性ビルディングブロックの設計 水素結合によるネットワーク形成を目的として、アミノ酸によるD4Rユニットの修飾について検討した。アミノ酸(グリシン、アラニン等)のN末端をアリル基で修飾した後、H修飾型のD4Rユニットとのヒドロシリル化反応を行うことにより、D4Rの各頂点にSi-C結合によりアミノ酸が導入された化合物が高収率で得られた。これらの化合物は分子間水素結合形成が可能であり、多孔性ネットワーク構築のためのナノビルディングブロックとして有用であると考えられる。
|