研究実績の概要 |
本研究では、カゴ型構造のシロキサンオリゴマーをナノビルディングブロックとして用い、有機基で3次元的に連結することにより、無機ユニットと有機ユニットが分子レベルで複合化された多孔性の融合マテリアルを創出することを目的としている。本年度は、Si-H基を有するD4Rユニット(H8Si8O12)を用い、各種ジオールとのSi-O-C結合形成による多孔体合成について検討した。Et2NOHを触媒として用いた脱水素反応により、D4R骨格を保持したまま架橋反応が進行することを確認した。プロピレンジオール(PD)、シクロヘキサンジオール(CHD)、アダマンタンジオール(AD)をリンカーとして用いることにより比表面積 500 m2/g の多孔体が得られた。PDで架橋された多孔体は、水中に浸漬することによって連結部のSi-O-C結合が加水分解され、ジオールの脱離を経て、シリカ多孔体へと変換されたが、CHDやADを用いた場合はより高い安定性を示した。特にAD-D4Rについては、水中に1日浸漬した後でもIR, 13C CP/MAS NMRスペクトルにほとんど変化がみられず、構造が保たれていることが確認された。一般に、ケイ素アルコキシド(Si(OR)4)の加水分解速度は有機基Rの種類に大きく依存することが知られているが、PD, CHD, ADの順にアルコキシ基のかさ高さが増加すると同時に、電子供与性が増すため、Siへの水の求核攻撃が抑制されたと考えられる。
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