研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107510
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 善浩 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (90314541)
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キーワード | 有機-無機ハイブリッド / ソフトナノ粒子 / ヒドロキシアパタイト / ナノゲル / 酸化鉄ナノ微粒子 / ナノバイオ |
研究概要 |
有機物がもつ機能性および多様性と無機物がもつ強靱性などを融合した有機-無機ハイブリッドは機能性バイオマテリアルなどとして期待がもたれている。本研究では、ナノゲルをはじめとするソフトナノ粒子と、高い構造安定性や独自の機能を有する無機材料とを合理的な分子設計のもと精密に融合することで、分子制御された融合マテリアルを開発し、細胞機能制御などのバイオ応用を行うことを目的とした。平成23年度は、カルシウムイオンに対し、より高い親和性を有するトリカルボン酸基を導入した多糖ナノゲルを用いることで効率的にヒドロキシアパタイトナノ微粒子が作製できることを明らかにした。具体的には、コレステロール基置換プルランに対し、イソシアナート基を有するトリカルボン酸基を導入した多糖誘導体からなるナノゲルを設計、合成した。このナノゲルをテンプレートとし、二酸化炭素の蒸散に伴うpH変化を利用したミネラリゼーション(pH gradient法)を行ったところ、ナノサイズのヒドロキシアパタイト微粒子を効率的に作製できることが示された。さらに、このナノ粒子の形成プロセスについて詳細に検討を行ったところ、ミネラリゼーションの初期段階において、ヒドロキシアパタイト結晶の前駆体と考えられるナノサイズのヘリカルリボン状の構造体の形成がみられた。このナノ構造体はリン酸カルシウムから形成されており、生体におけるアパタイトの形成途上でみられるナノ構造との類似から興味がもたれる。また、A03班片桐グループとの共同研究の結果として、バイオ応用に向けたナノゲル-磁性微粒子ナノハイブリッドの合成を行った。具体的には多糖ナノゲルを反応場として酸化鉄を合成することで、単純な操作によって水中で高い分散性と安定性を持つナノハイブリッド粒子を直接合成しえることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初の研究計画に沿い、分子制御に基づくナノ有機-無機ハイブリッド分子の設計と合成に焦点を絞り研究を推進した。その結果として、有機成分としては多糖からなるナノゲルを用い、無機成分としては、シロキサン、アパタイト、金属酸化物などを用いたナノハイブリッドを作製し、その基礎的な構造、特性評価を実現した点で、当該年度の当初の研究目的を概ね達成できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究により、ナノゲルと無機成分としての、シロキサン、アパタイト、金属酸化物からなるナノハイブリッドを作製できることが示されたので、当初の計画どおり、平成24年度はこのナノハイブリッドを薬物キャリアをはじめとする医療分野へ応用展開する研究を行う。さらに、応用展開に際して得られる知見をさらに、ナノハイブリッドの設計にフィードバックすることで、より高性能なナノ材料の開発を行う。
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