無機層状結晶を剥離させて得られるナノシートが形成する液晶(ナノシート液晶)は、ソフトマターの属性をもつ無機物質系である。本研究では、半導体光触媒活性をもつ層状ニオブ酸のナノシート液晶をベースとして、光エネルギー変換機能をもつ融合マテリアルを構築する。通常は剛直部位となる無機ユニットにソフトマターを用いることで、系全体に柔軟性をもたせ、柔軟性による動的特性にもとづいて光機能を発現する材料系の開発をめざしている。平成25年度は、前年度に達成したナノシート液晶の高次配向を深度化するとともに、ナノシート液晶の高次配向による光触媒反応の制御を検討した。 ニオブ酸ナノシート液晶の配向を外場によって変化させ、ミリメートルレベルのマクロに制御された構造をもつマクロ組織体の作成に成功した。組織体は、ナノシート液晶のインキュベーションと、液晶への電場と重力の多重印加とによって形成させた。まず、液晶のインキュベーションによって、一辺2マイクロメートル程度のナノシートが集積し、サブミリメートルサイズのドメイン(タクトイド)が得られた。さらにこのタクトイドが2次構造単位となって、外場によって配向し、ミリメートルサイズの組織構造を形成した。その際、電場と重力を平行に印加すると網目状の組織が、電場と重力を互いに垂直に印加すると縞状の組織が、それぞれ得られた。 次に、ナノシートが一方向に配列した縞状の組織体を用いて色素の光触媒分解を行ったところ、組織体の構造にもとづいて反応が制御されることが分かった。ナノシートにシアニン色素を吸着させて偏光紫外光を照射すると、色素の分解速度は、入射偏光の向きと光触媒であるナノシートの向きとが一致したときに大きくなった。 以上より、「ナノシート液晶の動的な構造を利用した光機能制御」という本研究の基本概念を実証する結果が得られた。
|