研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107518
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津田 哲哉 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90527235)
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キーワード | 複合材料・物性 / マイクロ・ナノデバイス / イオン液体 / 電子顕微鏡 / 先端機能デバイス |
研究概要 |
大気中で100Hzを超える電圧印加に追随可能な画期的なメンテナンスフリー電気化学アクチュエータを作製するため、本研究では金薄膜電極/室温イオン液体(RTIL)-PVdF-HFPゲル薄膜/金薄膜電極の3層構造を有する不揮発性ゲル融合マテリアルの設計とその電気化学アクチュエータデバイスへの応用を試みた。その過程において、様々なRTILを用いてデバイスを作製し、その電圧印加時の屈曲挙動を検討したところ、フルオロハイドロジェネイト系RTILを用いた場合のみ、アクチュエータが負極側に屈曲するといった特異な挙動を見出した。そこで、電圧印加時の動的挙動を研究代表者らが開発したin situ化学反応観察用電子顕微鏡システムを用いて評価したところ、用いるRTILの種類によって電圧印加時のイオン分極の初期過程が大きく異なることが分かり、イオンの輸率がデバイスの屈曲方向を決定づける重要なパラメータであることを見出した。また、1-ブチル-3-ビニルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルアミド([BuVyIm][Tf_2N])などのビニル基を有するRTILをポリマー化して合成したイオノマーにより作製したアクチュエータデバイスも、RTIL-PVdF-HFPゲル電解質を使用した場合と同様、電圧印加時に屈曲することが分かった。これら2つの方法で作製したデバイスを比較すると、RTIL-PVdF-HFPゲル電解質を使用した場合の方が大きな変位幅を示すことが明らかとなったが、現在、その詳細については、得られた融合マテリアルを形態学的ならびに力学特性的見地から調査していう。本年度は様々な基礎的知見の収集に成功するとともに、レーザー変位測定装置と研究代表者の所有している電気化学測定装置を同期化することで、極めて正確なデータが得られる態勢となり、次年度中に最終目標を突破する目途が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不揮発性ゲル融合マテリアルを合成し、メンテナンスフリー電気化学アクチュエータの作製に成功したが、本研究の最終目標である100Hzを超える電圧変化に追随可能な電気化学アクチュエータデバイスの作製には現時点では成功していない。しかしながら、これまでの研究により、その目標を突破するために必要な様々な基礎的知見の収集に成功するとともに、デバイスの評価技術も大きく向上しており、目標到達への道筋が出来上がりつつある。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本新学術領域研究に属する研究者との多岐にわたる共同研究を通じて、電気化学アクチュエータデバイスへの応用に適した高分子マトリックスや電極材料の探索を行う。また、それらを用いた不揮発性融合マテリアルをデバイス化することにより、その屈曲挙動に及ぼす影響について詳細に調査する。これらとこれまでに得られている知見を巧みに組み合わせることで、従来の電気化学アクチュエータを凌駕するデバイスの作製を行う。さらに、本研究で得られたデバイスのマイクロデバイス化についても取り組み、その評価に適したin situ化学反応観察用電子顕微鏡システム用セルの設計についても検討する。
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