本提案研究では、紫外線照射をトリガーとしてバイオミネラリゼーションを誘起するケージドペプチドの創製を目的とする。“ケージド~”とは“紫外線照射により~を放出する”と定義する。 バイオイメージングや新エネルギー分野において、金属ナノ粒子が注目を集めている。これら研究では、大きさおよび形状が精密に制御されたナノ粒子が必要となる。金属ナノ粒子の大きさなどを精密に制御するための方法論の一つとして、バイオミネラリゼーション開始剤を利用したボトムアップ戦略が挙げられる。バイオミネラリゼーション開始剤とは、鉱物形成能を有するペプチドと定義する。近年、高効率的バイオミネラリゼーション開始剤の開発を目指し、天然型バイオミネラリゼーション開始剤の誘導体合成が盛んに行われている。しかし、これらペプチドが関与するバイオミネラリゼーションの機構には未だ不明な点が多いため、適切な分子設計が困難な状況にある。 そこで申請者は、バイオミネラリゼーション機構の解明を目指し、バイオミネラリゼーション開始剤の活性を時空間的に制御する方法論の基盤となるケージドペプチドの開発を行うこととした。本研究では、(1)ケージドシステイン、(2)ケージド非水解性リン酸化アミノ酸、および(3)紫外線照射によるペプチド二次構造制御法の確立について検討を行った。 申請者は前年度、(1)に成功するとともに、(2)の一種であるセリン誘導体の合成を達成した。今年度は(2)についてチロシンおよびトレオニン誘導体の合成に挑戦した。さらに(3)については、反応速度は遅いながらもそのプロトタイプとなりうる架橋部位の開発に成功した。
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