研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107524
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 和則 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60283389)
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キーワード | ウイルスキャプシド / ペプチド / 自己集合 / タンパク質 / バイオミネラリゼーション |
研究概要 |
近年、球状ウイルスキャプシドやフェリチンの内部空間を利用したバイオミネラリゼーションが盛んに研究されているが、これらの研究は、天然のready-madeのキャプシド構造(タンパク質ナノカプセル)に頼っており、人工のtailor-madeウイルスキャプシドをde novo分子設計する戦略は未発達である。本研究では、我々が以前開拓したトマトブッシースタントウイルス(TBSV)由来のβ-Annulusペプチドからなる合成ウイルスキャプシドを用いて、タンパク質および無機微粒子との融合マテリアル「着せ替えウイルスキャプシド」を創製することを目的としている。 今年度は、β-AnnulusペプチドのC末端側をヘム修飾し、ヘムタンパク質で着せ替えたウイルスキャプシドの創製を検討した。しかし、ヘム修飾β-Annulusペプチドを合成することが可能であることがわかったものの、精製に難航し、目的物を単離するには至っていない。 また、β-AnnulusペプチドのN末端側をニトリロ三酢酸(NTA)修飾し、合成ウイルスキャプシド内での酸化鉄合成を検討した。NTA修飾ペプチドβ-Annulusペプチド存在下では、合成ウイルスキャプシドと同程度のサイズの30-50nmの球状の酸化鉄が合成できたのに対し、非存在下では無定形な酸化鉄しか得られなかった。つまり、合成ウイルスキャプシドが酸化鉄合成のテンプレートとして働いたと考えられる。XPS測定から、この酸化鉄はマグネタイト(Fe_3O_4)であることが示された。今後、合成ウイルスキャプシド内部で様々な無機微粒子が合成可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的の一つである合成ウイルスキャプシド内での酸化鉄合成に成功したが、表面への「タンパク質着せ替え」については、難航しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本来の目標である合成ウイルスキャプシド表面への「タンパク質着せ替え」を達成するために、研究計画を若干変更し、C末端側Ni-NTA修飾合成ウイルスキャプシドを構築し、その表面へのHis-tagタンパク質などの表面提示を検討する。
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