公募研究
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)実現のためには、現在臨床研究で使用されているBSHやBPAと比較し、腫瘍選択性・中性子捕捉効率が高く、低濃度で作用可能かつ水溶性などに優れた新規^<10>B薬剤の開発が不可欠である。我々はH23年度において、有機・無機ハイブリッド化合物のナノ粒子化法として注目を集めているレーザーアブレーション法を用い、高密度のホウ素原子を効率的にガン細胞に送達可能な含ホウ素ナノ微粒子の新規作製法を検討した。また、生分解性ポリマーにBSHを修飾した高分子^<10>B薬剤と、悪性メラノーマに対して親和性が期待されるコウジ酸構造を有する新規^<10>B薬剤を合成しBNCT用ホウ素キャリアとしての評価を行った。ホウ酸・過ホウ酸カルシウムとも、レーザー波長、照射時間、分散剤の添加時期に関係なく約100nmのサイズを有する分散水溶液の調製に成功したが、そのホウ素濃度は数百ppbとBNCT薬剤として使用するには不充分であった。BSH修飾ポリアミンは担がんマウスに対するBNCT治療において、高い腫瘍抑制効果及び高い延命効果を示すことが判明した。一方、コウジ酸修飾o-カルボランをメラノーマ移植マウスに対して投与後BNCTを行った結果、未処理もしくはあるいは中性子照射のみに比べてコウジ酸修飾o-カルボランで延命効果が確認された。また、現在臨床に用いられているL-BPAと比較すると延命効果が低いが、今回用いたL-BPAは^<10>Bが高濃縮されたものであり、一方コウジ酸修飾o-カルボランは天然同位体比のものを用いており、腫瘍へのホウ素集積性が約5ppmで更に^<10>Bが実質20%であることを考慮すると、今後、^<10>B高濃縮型コウジ酸修飾o-カルボランを用いることでメラノーマに対する高いBNCT効果が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
含ホウ素無機塩のレーザーアブレーション法による高濃度ナノ微粒子分散液の調製はナノ微粒子化には成功したが、濃度を改善するために照射条件の更なる検討が必要である。一方、無機ホウ素クラスターであるo-カルボランとメラノーマ親和性が期待されるコウジ酸とのコンジュゲート化合物をBNCT薬剤として評価し、メラノーマ治療BNCT薬剤としての可能性を確認することが出来るなど、ホウ素無機クラスターの有効性を明らかにした。
BNCTの治療効果を増強するためには、腫瘍細胞内^<10>B濃度をより高める必要があり、^<10>B高集積型ホウ素薬剤の開発が望まれる。今後は、^<10>B元素の割合が非常に高い窒化ホウ素無機クラスターの調製およびそのBNCT薬剤としての評価を行う。また、融合マテリアル研究領域の他の研究班と共同し、含ホウ素希土類金属酸化物ナノ微粒子を蛍光プローブ性を供えたBNCT薬剤としての評価を実施する。
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