研究概要 |
我々は,アルカンチオールで被覆したAuNPの両極部分に選択的にオリゴDNAを結合させる方法を開発し,互いに相補的な配列を有する二種類のAuNPZDNA結合体の自己組織化を利用して,AuNPの一次元配列化に成功した。本研究では,この技術を利用して,新しい機能・特性を発現する金ナノ粒子DNA融合マテリアルを構築することを目的とし,本年度は以下のように研究を行った。本研究で開発した手法は,特異な性質を示す新しい有機(生体分子,DNA)-無機(金属,AuNP)が融合したナノテクノロジー材料を構築する方法として次世代ナノテクノロジーの要素技術として非常に有用である。 1.ダブルクロスオーバー(DX)型テンプレートに沿った金ナノ粒子の配列化:既報に従い,AuNP/DNA結合体を調製した。DX構造二列の間にAuNPが配列する構造を取るように設計したDNAと混合して,梯子状に多数のAuNPを一次元的に配列することに成功した。 2.4wayジャンクション形成DNAによる金ナノ粒子アレイの構築:DNAはその配列により,4way junction構造(ホリデイ構造)を構築できる。このような配列を持つAuNP/DNA結合体を調製し,それらを混合することによりAuNPが二次元平面上で正方格子状に配列したAuNPアレイを構築することに成功した。 3.AuNP/DNA結合体およびその組織体の収率向上に関する検討:1,2のように金ナノ粒子の直線的および二次元的配列化には成功したが,その組織体のサイズ(連鎖の長さ)や収率は期待したほどは高くなかった。このため,電気泳動や密度勾配遠心法を用いてAuNP/DNA結合体を精製し,組織体構築の効率・収率を高める検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダブルクロスオーバー(DX)構造を用いたAuNPの一次元配列化およびホリデイ構造を用いた正方格子状AuNPアレイの構築には予定通り成功した。しかしながら,AuNP/DNA結合体の収率が想定していたよりも低いため,形成される組織体のサイズ(連鎖の長さ)や収率は期待したほどは高くなかった。このため,予定を変更して収率向上のための方法論の検討に時間を費やしたため,金ナノ粒子を接触させて導電性を獲得するという当初の計画は達成されていない。
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今後の研究の推進方策 |
成果のところで記述したように,AuNP/DNA結合体の収率を向上が問題点として挙げられる。これについては,電気泳動や密度勾配遠心法を用いてAuNP/DNA結合体を精製すること,およびアルカンチオールの組成を検討し,AuNP/DNA結合体の収率を向上することによって一定のめどは立ったので,今後は計画通りに研究を進めることができると考えられる。
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