本研究では,無機ナノ粒子や金属ナノ粒子の表面上に原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いて分子応答性ゲル層を形成し,革新的なスマート融合ナノ粒子の創成を試み,本年度は以下のような成果が得られた。 (i) 無機ナノ粒子表面上での分子応答性ゲル層の形成:平成23年度と同様にSiO2粒子表面上にATRP法によって分子応答性ゲル層を形成させた。動的光散乱法(DLS)や原子間力顕微鏡(AFM)などによってその粒径を測定し,SiO2粒子表面にゲル層の形成を確認した。また,リガンド含有量やモノマー濃度などの重合条件を変化させることにより,構造の異なる分子応答性ゲル融合SiO2粒子を調製した。 (ii) 金属ナノ粒子表面上での分子応答性ゲル層の形成:平成23年度と同様にAu粒子表面上にATRP法によって分子応答性ゲル層を形成させた。ATRPによってAu粒子表面上に形成させた分子応答性ゲル層の膜厚が均一であることが透過型顕微鏡(TEM)観察によって明らかになった。しかし,分子応答性ゲル修飾Au粒子の分散安定性が悪く,リガンド含有量やモノマー濃度などの重合条件を変化させることによってその安定性の向上を目指した。 (iii) 分子応答性ゲル融合ナノ粒子の標的分子応答挙動の検討:上記(i)および(ii)で調製した分子応答性ゲル融合SiO2粒子と分子応答性ゲル融合Au粒子が分散した水溶液に標的分子を添加した場合の粒径変化を調べた。その結果,ビスフェノールA(BPA)に対するリガンドを導入した分子応答性ゲル修飾SiO2粒子は,BPAに応答して粒径変化することがわかった。一方,分子応答性ゲル修飾Au粒子は分散安定性が低く,まだBPA応答性の検討には至っていない。(ii)で述べたように均一なゲル層の形成に成功してるので,解離基の導入によって粒子の分散安定性向上を試みている。
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