研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23107535
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東口 顕士 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90376583)
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キーワード | 構造色 / マイクロカプセル / 光架橋 / 浸透圧 |
研究概要 |
構造色とは、可視光の波長と同じ程度(数百nm)の微細な物理的構造と光学的効果(回折、反射、干渉など)によって色が発現する現象である。構造色バルーン、すなわち直径数百μm、膜厚数百nmのポリスチレンマイクロカプセルは、薄膜干渉によって様々な色を発現する。この構造色バルーンは浸透圧による膨張、表面張力による収縮を起こし、それに伴い膜厚と色調の変化が起こることを研究代表者らが以前発見した。平成23年度は、この構造色バルーンに溶媒応答性だけでなく光応答性を付与することを目的とし、光硬化性ポリマーを用いてバルーンを調製した。ポリ(ビニルシンナメート)(PVC)は光環化付加反応によってポリマー主鎖同士が架橋されることが知られている。よってPVCで形成された構造色バルーンに紫外光照射すると三次元ネットワーク構造が形成されてポリマー球殻の機械的耐久性が向上し、変形が起こりにくくなると期待される。PVC(重量平均分子量Mw=177000)を材料とし、二重乳化法によって構造色バルーンを調製した。このバルーンの溶媒応答性を確認するために、フローセルとシリンジポンプを用いアセトン/水混合溶媒を導入すると、サイズ変化とそれに伴う色調変化が確認出来た。PVCはこの混合溶媒に難溶であるため、薄膜のポリマー総量は変化せず、バルーンのサイズ変化に伴って膜厚が変化することにより色調の変化が起こったと推測された。バルーン変形前に紫外光照射した場合には収縮を停止させられたのに対し、光照射しなかったものではバルーンの収縮と共に大幅な色調変化が見られた。これを応用し、任意の色調を呈したところで色調変化を停止させられることも確認した。このような応答性の変化は、三次元ネットワークの形成による溶媒含有・透過速度の減少および機械的耐久性の向上による変形速度の低下によると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、構造色バルーンに溶媒応答性以外の別の応答性を付与することに成功した。また次年度(24年度)目標である金ナノロッドに関して多少の試行を行い、報告の時点での進展は無いが、進捗としては当初計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
構造色バルーンの材料として硫黄系高分子を用い、金ナノロッドと接合させることで配列構造を形成させる。またイオン液体由来ポリマーの合成と、イオン交換による屈折率変化、それに伴う構造色変化についても検討を行う。
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